第12話 ご飯をなんとかしてほしい5 城の評判
■ロレンツォ9歳
僕の狩ってくる肉類はジビエなんだけど、
ジビエは狩ってからすぐに食べても美味しくない。
脂分が少ないから固いうえに、
タンパク質が未分解で旨味が不足している。
しかし、ちゃんと血抜き・熟成させて、
適切な塩・ハーブをまぶせば、
味が酷い、ということにはならない。
「お坊ちゃまの携わったお肉って、柔らかくて美味しいですね。こんなの食べたことがないです」
僕はフィナにちゃんとした食材を渡し、
調味料の適切な量を覚えてもらう。
僕にとって適切な量を理解してくれれば、
ちゃんとした料理が出てくる。
「お坊ちゃまの味覚に合わせていたら、私も薄味派になりましたわ」
「それに、このところ体の調子が良い気がする」
フィナとアルベルトの会話だ。
「お坊ちゃまが以前おっしゃっていましたね。パン・肉・野菜をバランスよく取ることが大事って。偏ると便秘、肥満、貧血、イライラとか病気になったり」
「私も立ちくらみが無くなりましたわ。それに肌艶が良くなりました」
「ああ、そう言えば、お通じがよくなりました」
アルベルトもフィナも高く評価してくれる。
「古代書のお陰もあるけど、フィナの料理が上手だからだよ」
僕も昔よりも体調が良くなった気がする。
この世界だけじゃなく、前世と比べても。
そりゃそうだよね。
自炊はよくしたけど、ジャンクフードも多かった。
こうして僕の城での生活は段々と狭くなっていったけど、反比例するように生活圏が街や森へと広がっていった。
「ねえ、ランベルト。城の評判がかなり悪い気がするんだけど」
街や村で聞く城に関する噂話には碌なものがない。
「気の所為ではありませんな。私も城でしか暮らしていませんでしたが、こうして市井に紛れると悪い評判しか聞こえてきません」
「私、たまに実家のお父様たちと話したりするんですけど、いつも城での暮らしぶりを心配されますわ。実家ははっきりとは言いませんが、今の世の中、善政とは言い難いみたいですよ」
総合すると、特に目立つのが3点。
税金が高すぎる。しかもかなり恣意的で
支払いの悪い者に残酷。
美女に目がない。
目立つ女はすぐに宮廷に連れて行こうとする。
刑罰が厳しく息が詰まる。
「ここだけの話、2番目の美女に目がない、というのは王と次男レオニダが評判を下げているみたいだよ。彼らが来るというだけで親は急いで娘を隠すんだって」
「本当ですか?最低じゃないですか」
フィナ、王の批判するとやばいよ。
「支配者が被支配民の女性を連れ去るなど、やっちゃいけない項目のトップにくるぐらいの酷い話なんですが」
アルベルトも憤慨している。
「それにね、みんな王の正妻・側室がとっても嫉妬深いことを知ってるんだよね。それもあって宮中に娘をやる、ということはみんな敬遠してるようだよ」
「ああ、さもありなんというやつですな」
「宮廷に対して恨みがましいことを言うと、すぐに王室警備隊が飛んでくるってのも有名みたいですな。
「領民は城に対して戦々恐々としてるってことだよね」
「ところで、僕は一目で上流階級とわかるせいか、最初はみんな警戒してたよね」
「私どももそうでしたな。やはり物腰で庶民ではないとわかりますから」
「未だに王家の者だって言えないんだけど」
「いや、坊ちゃま。それはバレたらマズイでしょ」
「はは、やっぱり?」
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