第8話 ご飯をなんとかしてほしい1
■ロレンツォ9歳
「お坊ちゃま、昔から少食でしたが、あの事件以来もっと少食になった感じですね」
「あれで体質が変わったのかな。効率が良くなったのかもしれない」
もちろん、そんなことはない。
転生してから困ったこと。
ご飯が喉を通らない。
僕たちはお城の少し離れた場所で暮らしている。
城からほっとかれているのと、
僕たちも城を避けているのだ。
ご飯を作ってくれるのは、フィナだ。
以前は宮廷料理人が作っていてくれたのだけど、
例の眠り病事件以来、
ご飯はフィナが担当してくれる。
だから、一生懸命ご飯を食べようとするんだけど。
フィナが悪いんじゃない。
フィナの料理の腕は悪くない。
この世界としては。
城の料理人と比べても劣っているわけじゃない。
言っては叱られるけど、
この世界の料理レベルが素朴なんだ。
素朴というか、繊細さに欠ける。
例えば、食材。
王家や貴族の食べるものは肉類が多い。
それは良いのだけど、
血抜き不完全なままドーンと出てくる。
大抵は塩漬けか干し肉として出てくる。
狩りたての場合もある。
どちらにせよ、保存状態が悪く臭い。
悪い意味で肉が熟成されている。
しかも、やたら塩やハーブを使いまくる。
塩やハーブは効果だ。
だから、貧乏人に対して見栄をはるわけだ。
いや、競争相手は貴族などの高所得者層だろう。
マウントの取り合いをしているのだ。
結果として、特に肉はもう料理とはいえない。
臭くて塩っぱくてハーブまるけの味になる。
「おにいさま、私、お肉きらい。だって、くさいんですもの」
「だよね。みんな、よく我慢して食べてるよね」
「実は私も……」
不思議だよね。
お肉好きな人っているんだろうか?
なんで、お肉をもてはやすんだろうか。
それから、野菜を殆どとらない。
野菜は貧乏人が食べるものらしい。
食事のバランスが悪くて、
それが原因の症状が出てる人が多い。
便秘、貧血、イライラなんて典型的な症状だ。
むしろ、庶民の方が健康的な食事をとっている。
だから、庶民のほうが長生きだったりする。
僕は前世日本では自炊してたし、
料理は一通りこなせる。
僕はフィナを教育することにする。
「フィナ、城の古代書を読んでたら、食事について書かれていてね、穀物、野菜、肉をバランスよく食べるのが大切らしいよ」
「そうなんですか?貴族は肉ばかり食べたがりますが」
「古代書によると野菜は庶民の食べ物、というのは誤りなんだって。バランスを崩すと、便秘、貧血、イライラが高じて肥満や病気になったりするって書いてあった」
「便秘、貧血、イライラが高じて肥満、ですか?」
フィナは僕の説明を聞いて、
即座に食事バランス党に変身した。
思い当たることがあるのだろう。
説明するときに古代書というのは万能だな。
「ああ、野菜にそんな効能がああったなんて!」
ローリアも目の色が変わる。
「おにいさま、私もやせたい」
セリアは全く太っていないんだけど。
むしろ、ガリガリだ。
「わかりました。明日から献立を工夫します!あと、お肉も焼き方を変えたほうがいいですね」
「お肉はね、古代書に処理方法がのってるんだよ」
「へえ」
「獲物の締め方とか、熟成の仕方とか、焼き方とか」
「お坊ちゃま、それ教えて欲しいです」
「うん。古代書通りに少しずつ肉の扱い方を変えていこう」
「ところでさ、肥満って気になる?」
「そうですねー、ご年配ならともかく、若いうちなら女性は痩せたい人がおおいですね」
王国では痩身の方が好まれる。
実はご年配も含めて。
現代日本と似たような価値観だ。
この世界の貴族は太った人が多いが、
特に女性は苦慮している。
ダイエットのために血抜きをする人も多い。
誤った美容法がまん延しているのだ。
この世界の肖像画の女性は痩せた人ばかりだ。
あれは100%忖度で描かれてある。
地球的に言うと、脳内フォトショップの産物だ。
顔もそうだ。
肖像画と実際の人物がかけ離れていることが多い。
美の感覚が前世と変わらない。
たまたまなんだろうけど。
基本的にこの世界の人は美しい人が多い。
系統的には地球の西洋と東洋の
いいとこどりみたいな感じだ。
目鼻立ちはくっきり、でも全体的に柔らかい。
男女とも。
あと、小顔で手足が長い人が多い。
いわゆるモデル体系である。
後ほどわかるのだけど、
むしろ庶民の方がルックスのいい人が多い。
貴族は食生活の乱れや有毒な化粧のせいで、
体型が崩れ肌の汚い人が多い。
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