2 ロレンツォ9歳~

第7話 四属性の中級魔法を攻略中

■ロレンツォ9歳


 転生してから1年がたった。

 春まっさかりで、桜に似た花が咲いている。

 若干、色が濃いのだが。


 僕の魔法に関しては

 中級魔法を発動できるようになった。

 風魔法だけだけど。

 残りの3属性、火・土・水魔法は

 中級魔法にそろそろとりかかったあたりだ。


「お坊ちゃま、本当に覚えが早いですね。私が教えることができるのはここまで。上級魔法以上は申し訳ありませんが、独学ということになります」


 フィナは中級魔法までしか覚えていなかった。

 それも水魔法だけだ。

 ただ、他の火・土・風魔法の詠唱に関しては

 教えるだけなら可能だ。

 発動できないだけで詠唱は学習しているのだ。



 僕が得意なのは、風魔法。

 次が土魔法、水魔法、火魔法の順に覚えやすい。


 風魔法は自分で言うのも何だけど才能がある。

 だから、早々と中級魔法を覚えたし、

 なんと、飛行魔法ができるようになったのだ。


 飛行魔法は魔法中級編に触りだけ書いてあった。

 空中に浮かぶことができること、

 さらに飛行することができる魔法があるという。


 風魔法かどうかははっきりしなかったが、

 風魔法で挑戦してみた。


 チャレンジすること1ヶ月、

 空を飛べるようになった。

 単純に足の裏から風を吹き出す要領で、

 あと、腕から安定のために風を吹き出す。


 飛行速度は時速20kmぐらいだし、

 まだふらふらして安定しない。

 小さい頃、自転車の練習をしたことを思い出す。


「お坊ちゃま、もうそれは中級魔法ではないと思いますよ。上級魔法です。というか、上級魔法でも空飛べるなんて聞いたことがないです」


 魔法書にも飛ぶ魔法についての記述はあやふやだ。

 後日のことになるが、

 空を飛ぶ魔法は古代魔法に詳しく乗っていた。

 それは風魔法ではなく空間魔法に分類されていた。


 僕のは多分、オリジナルの風魔法だ。

 もしくは、風魔法の応用。


「まだまだ安定しないのが課題だね。それと速度と航続距離の向上。ビューンと飛んでくような速さが欲しいし、航続距離も1時間以上は飛びたいところなんだよね」


「いや、お坊ちゃま。頼みますから、危険な真似だけはやめてくださいよ」


「大丈夫だって。防御魔法もかけてるし」


「魔法の二重掛けという荒業を…。しかも今でも半端ない魔法持続力なんですが」


 普通、魔法は一つしか唱えられない。

 魔法の効果が消えてから

 次の魔法に取り掛かるのが普通だ。

 

 僕は無詠唱というか、頭の中で次々と

 魔法の詠唱が展開していく。

 それに伴い、魔法の二重掛けどころか

 三重、四重もできる。



 魔法の練習は実は夜中の方が捗る。

 みんなが寝静まると窓から飛び出して森に向かう。

 夜はランベルトはいない。

 一人で練習だ。


 飛行魔法は本当に楽しかった。

 だって、空を飛べるなんて!


 満天の星と地球のよりも大きい月のもと、

 前世の映画に出てくるような場面になったり。


 昼間ランベルトたちと練習しているときに

 空高く舞い上がって雲の中に飛び込んだり、

 鳥の群れと一緒に編隊を組んでみたり。


 下を見ると、心配そうなフィナの顔が見える。


「お坊ちゃま、本当、飛行魔法だけは何度見ても慣れません」


「フィナ、なんなら空へ連れて行ってあげようか?」


「冗談言わないでください!絶対にお断りします」



 飛んだ後は流石に息が切れる。

 次の日に少し影響が出るので、

 ランベルトと剣の練習をするのがちょっと辛い。


 もっとも、身体強化魔法も覚えたので多少は楽だ。

 今の所、体力が5割増しになる。

 今後、もっと強化されると思う。


 ランベルトとの練習では

 身体強化魔法を使わせてもらえないけど。

 それに、使ってもランベルトには全然勝てない。


 彼は10代でB級冒険者になったという。

 期待の星だったわけで、

 それでも致命的なミスをしたらしい。

 それを母上の実家が被って、

 かつ彼をスカウトしたのだ。


 今でも、王立騎士団とかで稽古を続けている。

 騎士団長といい勝負ができるそうだ。

 王国でも有数の剣の使い手になっている。



 ちなみに、フィナも小剣の使いが非常に上手い。

 僕だと全然勝てない。

 性格はポヨポヨしているのに。


 剣だけでなく、教育も行き届いている。

 読み書き、計算は勿論のこと、

 王室や貴族の礼儀作法とか詳しい。


 彼女は男爵家の3女で、

 花嫁修業がてら母上に仕えるようになった。

 ちゃんとキャリアを積めば、

 事務官としていい線いけるだろうと思う。


 でも城に来たばかりのこと。

 彼女はなにかのミスをして、

 それを僕が上手くゴマかしたらしい。

 そういうことが何度かあって、

 僕に恩義を感じているようだ。


 ◇


 午前中の魔法講座、先生役は週2僕が担当する。

 生徒はセリアとローリアだ。


「セリア、聖魔法は向上してるかな?」


「はい、おにいさま!今は私がおせんたくたんとうです!」


 いや、王族が洗濯しちゃいけないと思うんだけど。

 僕たち以外の人たちをとことん疑っているから、

 なんでも自給自足生活なんだ。


 それと、セリアの清浄魔法は本当に便利だ。

 ゴシゴシという重労働じゃない。

 洗濯物を前にして手をかざすと衣類が光り輝き

 すぐさま新品同様になっている。

 多分、衣類の回復魔法も混ざってるんじゃ?


 僕は聖魔法をセリアに教えることはできない。

 ただ、4属性魔法を教えている。

 逆に聖魔法をセリアから学ぶんだけど、

 全然発現しない。

 多分、才能がないんだろう。



「ローリアはどう?」


「ロレンツォさま!私は攻撃水魔法と防御水魔法の初級が無詠唱で出せるようになりました!」


 おお、凄い。

 彼女は現在13歳。

 魔法レベルは標準的と言えるのだけど、

 無詠唱というのが普通じゃない。


 勿論、多くの魔法使いは無詠唱を練習する。

 実践的だからね。

 でも、この年で無詠唱は凄い。


 ああ、僕も無詠唱だけど、

 あれはロレンツォが凄すぎるからだね。


「セリア様を守るために、武術も嗜んでいます」


 ローリアの一番の仕事はセリアと一緒にいること。

 セリアは若干分離不安症気味なんだ。

 そばに誰かがいないと不安になる。


 そして、2番めはセリアを守ること。

 ローリアもちゃんとした家の子だから、

 貴族教育は幼い頃から受けている。

 もちろん、武術も嗜んでいる。

 彼女は小剣だな。

 達人というわけにはいかないけど、

 それでも実用性の高い技を覚えている。

 


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