第5話 次男レオニダ視点

「作戦は失敗したようね」


「残念ながら、お母様」


「いいこと、あなたは絶対に王にならないといけません」


「はい、お母様」


「一番の敵は三男です。王家史上稀にみる天才。しかも、母親が宮廷一番の美人でした」


「僕は母上が一番美人だと思います」


 ここでお愛想を言わないと機嫌が悪くなる。


「いいのよ、慰めてくれなくても。王の寵愛が三男母にあったことは間違いないわ。でも排除しましたけどね」


「お母様はいい仕事をなされました」


「本当にね。でも、あの薬師には消えてもらわねば。なによ、絶対にご希望は成就されます、なんて大口叩いていたくせに」


「お母様、薬師はどうするのですか」


「もう例の者に依頼しましたから、そろそろ報告があるかもしれません。あの薬師は三男の祖父、ガルディーニ伯爵の事業を潰すのにも役立ちましたからね。口を塞ぐのにいい頃合いね」


「伯爵の販売する食品に毒を混入させたのですね」


「ええ、レオニダ。毒の使い方をよく見ておくのよ」


「はい、お母様」



 オレは小さい頃から母上に英才教育を受けてきた。

 小さいときは言われるがままだったが、今は違う。


 何しろ、兄弟が愚かだ。

 長男は愚鈍で4男は鼻を垂らしている。

 父親は欲深く、悪政をしいて評判が非常に悪い。


 オレがトップに立たなければ。

 今はそう強く願っている。



 障害は三男だ。

 小さい時からとんでもない才能を見せてきた。

 母上も神経質なほど警戒している。


 だから、奴の母親や母親の実家を攻撃した。

 そもそも、奴らはさほど高貴な家柄ではない。

 王家に嫁するのがおかしいのだ。

 卑しいくせに図々しい。


 母親は毒で死んだ。

 女性専用の毒があるという。

 実家のほうは毒事件で事業に大赤字が出た。

 毒は母上の実家の得意技だ。

 秘中之秘で、実家の一部以外、誰も知らない。


 奴の母親の死因は不明とされた。

 だが、毒殺であるとの疑いが城に広まっている。

 だから、城では毒への警戒心が非常に高まった。


 三男に対する毒殺は慎重を極めた。

 有名な眠り毒を食事に混入し続けた。

 これは極めて発覚しにくい毒だという。

 食事係を買収して、半年かけた作戦だった。


 上手くいったように思えた。

 三男自体は危篤状態が続いていたと聞いたが、

 残念ながら持ちこたえたようだ。


 その後、奴の警戒が更に強まった。

 城の奥から出てこない。

 食事も自分たちで用意するようになった。


 奴は引きこもりというわけではない。

 なにやらコソコソしているようだ。

 いかんせん、さっぱり活動が見えてこない。

 せいぜい、図書館にこもって読書してるだけだ。

 噂によると、しょっちゅう外出しているようだが。


 近づこうとすると、あの執事が出てくる。

 元B級冒険者で剣の達人だ。


 ポヨポヨしたメイドも案外抜け目がない。

  

 奴はどうやって、外出しているのだろう?

 食材はどうやって手に入れているのか。

 穴でも掘っているのか?



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