第2話 この世界どうなってるの

■ロレンツォ8歳春


 まず、この子ロレンツォ。

 王家の三男。

 もの凄い天才だった。


 生まれて半年で言葉を話し、

 2歳で2ヶ国語にチャレンジし始め、

 4歳で国際政治を語り始めた。


 それが兄弟たちの警戒心を煽った結果、

 毒殺を計画されたというのが、

 執事ランベルトの見立て。


「であるからには、今後は才能を見せびらかしてはなりません。特に、発現しかかっている魔法の才は絶対隠し通すべきです」


「そうですよ、お坊ちゃま。眠り毒はもうたくさんです」


 数日後、僕はようやく体調が戻り

 ベッドから起き上がれるようになった。

 僕は執事と侍女を交え、現状を相談し合った。


「坊ちゃま、厳しいことを申し上げて申しわけございません。しかし、現状では坊ちゃまを支えるものが我々しかいません」


 母上は2年前になくなっている。

 実家は没落している。

 しかも、男爵家だ。貴族としては位が低い。

 後ろ盾はほぼない。


「私どもも力は微小。より警戒する必要がございます」


「それに、ご存知の通りご兄弟の人間関係が複雑です」


 第1王妃の息子は四男。

 第2王妃の息子は次男。

 第3王妃の息子が3男の僕。それと妹。

 第4王妃の息子が長男。

 第1~4王妃と記載したけど、

 正式な王位継承者の母親が正妻と認定される。

 だから、母親同士の争いが起こりやすい。


 で、僕の母上は2年前に亡くなっている。

 理由は不明。

 でも、勢力争いに巻き込まれたというのが有力。


「そうだね、色々な勢力も怖いし」


 国内では一番の勢力は王室じゃない。

 教会だ。

 小麦、ワインの大規模経営をし、

 物流、金貸しにも非常に強い影響力を持つ。


 さらに、ギルド。

 ギルドは支配者に対する圧力団体となっている。

 背後には教会がいることが多い。


 外に目を向けると、

 隣国は東にボネース帝国、西に神聖イスタニアン。

 ウチのデル・テスタ王国の数倍も大きい。


 その二大国にはさまれて、

 いつ侵略を受けるかわからない。

 王国は両国の緩衝地帯だなんて

 王家の皆は言っているけど。


 それが意味することは、

 バランスが崩れたら襲ってくるということだ。

 傀儡にするとかの手もあるしね。


 王は酷薄で欲深く愚かだ。

 継母は嫉妬心が強く愚かだ。

 兄弟たちは意地が悪く愚かだ。


「ホントここだけの話だけど、王家って愚かな人が多いよね。王家に将来ってあるのかな」


「坊ちゃま、くれぐれもそのようなお考えを表に出してくださるな」


「そうですよ、そういう考えがあるだけで心が漏れたりしますよ。それに、セリア様が影響を受けると困りますし」



 僕は宮廷政治に揉まれたいわけじゃない。

 大国に囲まれて国際政治の舵取りをしたいわけじゃない。

 そもそも、転生前はヒッキーのゲーマーだったんだ。

 いきなり王子さまとか言われても困る。

 気軽に暮らしたいんだ。

 スローライフはムリなのかな。


「力を極力、表に出さない。これに限るのではありませんか。スローライフを送りたいというのが坊ちゃまの願いならば、それを目標になさるのが宜しいかと。宮廷追放を狙ってはどうですか」


「そうか、ランベルトの言うとおりだね。力を見せなければ、狙われにくい。魔法が発現しなければ、王位継承権が無くなる。そうすれば、どこかの領地に追放されて、宮廷闘争からは距離をおけるものね」


 よし、魔法を隠して城を追放されよう。

 ということで一致を見た。


 

「もちろん、我々も最後までお供します!」


 力強く宣言する執事ランベルトと侍女フィナ。

 なんでそんなに忠誠心が強いの?


「私どもはお坊ちゃまの才能に惚れ込んでおります」


「それにお坊ちゃまはお優しい」


 だそうだ。そう説明されても謎の忠誠心だ。

 天才で性格がいいってどこの主人公?


 確かにロレンツォの頭脳はもの凄く良さそうだ。

 彼は頭脳はそのまま残してくれたみたいで、

 僕のIQが50ぐらい上がったような気がする。

 えらく頭脳明晰になっているのだ。


 これに僕の現代知識を合わせれば!

 ってダメだな。

 僕は前世では引きこもりの28才だもの。

 特別な知識はないし。

 FPSのゲーマーとしては

 けっこう名が売れてたんだけど。


 そういえば、なろう好きだから、

 へんてこな知識はたくさんあるぞ。

 ヒントにはなるかもな。


「妹もどうにかしなくちゃいけないよね」


 執事や侍女はもともと母上のお付きだった。

 母上の死後、そのまま僕たちにスライドしてきた。


 以前はもっとたくさんの使用人がいたのだけれど、

 今はこの二人だけだ。

 この二人は僕たちの親戚にあたる。


 それと、妹のセリアにつけられた侍女が 

 一人いる。

 彼女もフィナと同じく元々は花嫁修業として

 母上の親戚から派遣されてきて

 そのまま僕たちと一緒にいる。


「セリア様はまだお小さいからこの先どうするか、というのはおいおい確認していくとしまして、私どもと行動をともにする、というのが自然でしょう」


「だよね。別行動をしたい、などと彼女が言うとは思えないし」



 それにしても、執事や侍女も優秀だが、

 8歳でこんな話ができてしまう僕。

 優秀すぎる。

 僕、というかロレンツォの頭脳が。


 僕が8歳の時って、まだオネショを警戒してたぞ。



 のろのろと起き上がり、トイレに行く。

 手を洗うついでに鏡を見たら、凄い美少年。


 誰?


 僕は転生を実感した。

 そして、凄く感謝した。


 僕は前世ではブ男とは言わないけど、フツメン。

 日本人基準でもモブ男。


 それが転生したら世界基準で美少年。

 日本の街歩いていたら、ショタ釣り放題の美少年。

 それが僕。


 軽くウェーブのかかった金色の髪。

 マッチ棒が数本のりそうな長いまつ毛。

 透き通った大きな青い目。

 すっきりと通った鼻。

 女装してもおかしくないような美少年。



 そういえば、侍女のフィナも美人だし、

 執事のランベルトも渋いおじさんだった。

 妹のセリアもお人形さんのような美少女だし。

 ひょっとして、美男・美女の世界に転生した?



―――――――――――――――――――――――

ブックマーク、ポイント大変ありがとうございます。


励みになりますm(_ _)m

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る