第20話 絵描きの少年 ファビオ

 少年の元に駆け寄る。炎は近くの村人が急いで消火作業に入り、消しとめてくれた。大事にならなくてよかったが、敵の接近を知らせる役割もあったのか。どうも日本の常識を持ち込んでしまう。要反省だな。


「うわ、凄い集中力。この子まだ気づいてないよ。」


「嘘だろ。あ、ほんとだ。」


 少年は一心不乱に絵を描いている。ラフスケッチって奴か?風景を描いているのかな?


「ちょっとごめん。今いいかな?」


 子供がびっくりしないように、目線を相手の高さまで下げる。12歳くらいかな?


「うわ!?なんですか?急に。」


「いや、まあ驚かせてごめんね。君、街から来たの?さっき、盗賊みたいな人が君のこと狙ってたみたいだから。」


「一応は、追い払ったんだ。お坊ちゃん、どこの子かな?」


「ん、坊ちゃんって年じゃないぞ!おいらはファビオ。サンティ画房で奉公してるんだ!」


 がぼう?もちろん、俺は知らない。


「ああ、サンティ画房か、親方の依頼をよく受けてたな。ドミニコさんは元気か?」


「あれ、お姉さん、親父の知り合い?」


 知り合いかもってなった瞬間急に警戒心がなくなった。まだ早くない?信用するの。まだ子供ならしょうがないか。


「親父?あれ、じゃあそこのサンティさんがお父さん?」


「なんか変服着てるねおじさん。怪しい人とお話しちゃダメって、親父が言ってた。それよりお姉さん、綺麗だね。もしよかったらなんだけど、この花を持ってそこに座ってくれない?15分で描けるよ?」


 違った。思ったよりちゃんとしてた。ディアナが美人だからモデルにしようとしているだけだった。なんなら口説こうともしてるし。

 どうせ俺は絵になりませんよーだ。


「口達者な弟子だな。親方に似てるわ。絵のこととなると夢中になっちゃうところとかもね。あのエロ親父も毎回口説いてきたからな。」


 うんうん、どうやら浅からぬ縁があるらしい。どうしたものか、ひとまず街まで送り届けようか。


「そうだよ。この僕はね、親父と肩を並べる画家になるんだ!」


 屈託のない笑顔で少年は言い切った。


 

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