第18話 街へ行く
村にはもう留まれない。集住には人口が必要だ。2人では無理だ。
彼女の家は村で最も大きな家だった。多分祭政一致だったのだろう。俺が来るという予言も当ててきているし、この村もだいぶ栄えたのだろう。
もっとも、自分たちの命運を予測できなかったのは、なんという悲運か。
「じゃあ、行こうか。」
ディアナは、崩れた家の中に器用に入り、遺産を回収してきた。
「ああ、行こう。」
胸の前で手を合わせる。生き残った者の無事と安寧を祈る。
死者には黙祷を捧げる。
「ありがとう。皆も喜ぶだろう。」
目的地は、人類の街。フロレシアという街だ。エルフの村と細々と交易しているらしいが、これ多分、商人同士で勝手に仲良くやっているだけだな。公的なお付き合いはなさそうだ。エルフ側はふわっとしか理解してないが。
「街までどれくらいなんだ?」
「歩いて7日だな。」
「うーん、じゃあ10日はかかるよねえ。」
「ああ、かかるな。実はもう疼きが止まらなくてな。」
「夜まではお預けね。」
「ああ、分かっているさ。でも、たくさん虐めてくれよな。全部、めちゃめちゃにしてほしいんだ。」
「はーい。」
不謹慎な気もするが、生きねばならない。死と隣接したことで生じたストレスは、消滅させなければならない。
添い寝をしてディアナを抱きしめる。すすり泣いている。良いことだ。涙は洗い流す。過剰な悲しみも怒りも。理性を取り戻す重要な禊なのだ。
俺よりも少し背が低いくらいに思っていたが、今日の彼女はいっそう小さく思えた。俺の胸に顔をうずめている。あまり意識したことはなかったが、金髪のウェーブがかった髪は、花の香りがした。
「ありがと。落ち着いた。今日は好きに虐めていいよ。」
「え、じゃあゆっくりこうして抱き合っていようよ。」
意地悪で言ってみる。
「え、それだけはやめて。誰のせいで淫らな体になったと思ってるの。」
照れを期待したのに、失敗に終わった。真顔で怒らないでよ。
「あ!?そんな、いきなり!?」
魔力を送り込む。今日は早めに寝るんだ。
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