第17話 エルフェンシュピーゲル

「じゃあ、俺はエルフェンシュピーゲルということか。」


「ええ、あなたこそ、かつての大魔王を討ったエルフェンシュピーゲルね。」


「なんか大それた話になってないか?俺はただの人間だぞ。」


「それはこちらの世界に来る前の話よ。でも、今は魔法を使うわよね。」


 それを言われると反論できない。


「強くならなきゃいけないってこと?」


「ええ、そうなるでしょう。」


 まったくやめてほしい。人生にスパイスとしてのストレスは必要だ。でもいきなり100万辛は聞いてない。


「祠を出てすぐに、君に会ったのは何か関係ある?」


 ディアナは少し答えに躊躇しているようだった。

 しかし、数瞬ののちには意を決したらしい。


「お告げがあったの。私の村のシャーマン、まあ、私のおばあちゃんなんだけど、エルフェンシュピーゲル、ああ、祠の鏡が人を呼ぶって。迎えにいって、その、その男を伴侶にしなさいって。」


 ええ、なんだかすごく前近代。まあ、散々抱いておいてなんだけど。


「いや、まあ会ってみたら、悪くないし、強いし、いいかなあ?とは思ってたんだけど。」


 強い?と思ったがエルフは魔力量が正義みたいなところがあるのかもしれない。たしかにまだ俺は自分の底を知らない。

 あと、照れてる顔はすごくかわいい。


「いきなり【三散火さざんか】打ち込んだこと忘れてないよね?」


「ゴメンナサイ。だって魔力量は人外だし、黒づくめだし、完全に悪魔じゃん。それに嘘をついて弱体化しても。それが分からないほどに強い可能性があったし。」


「そういわれても、あれが俺の世界の戦闘服だから。」


「あなたの元いた世界って魔界なの?」


「いや、どうだろう、資本が悪魔かどうかによる。いや、やっぱり魔界かもしれない。」


 資本に搾取されるのが労働者だけと思うなよ。

 資本家もまた贅沢が許されない。資本家同士の競争に巻き込まれるのだ。


「あ、ごめん。辛いこと思い出させちゃった。それはともかく、まあ、祠の鏡が送り込んでくるなら、それは大人物だろうって話になったの。」


「小物ですみませんねえ。」


「まったく、謙虚なんだから。あれ、もしかして運命から逃げようとしてる?それはダメ。大魔王が復活するはずだから、逃げても無駄なの。」


 ディアナはとても淡々と言った。その後、満面の笑みでこう言った。


「それに大丈夫よ、私が大人物にするから。」


 まったく俺はとんでもない女の伴侶になってしまったらしい。

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