第12話 森の夜は長い
一日の半分以上を占める森の暗闇は、二人の足を引き留める。それは単に移動できなくなることのみを意味しない。
「お願い、アキラ、今日も抱いて。」
「いや、やりすぎじゃない?もう毎晩じゃん。」
「ええ?男女が二人夜の森、何も起こらないはずがないだろう。じゃあ同じテントで寝よう。大丈夫だ、襲ったりしないから、ね。」
まあ、誘惑はするけど、と呟いたのが漏れ聞こえてくる。
「待ってくれ、君は自分の庭を移動しているようなもんだから、そんなに疲れないんだろうが、俺はへとへとなんだよ。魔法の練習もしたいし。」
「うう、もう、私に飽きたのか?」
待て、涙は反則だろう。そんなにしたいのか?
「いや、違うって。」
こんなやり取りばっかりだ。正直、夜の営みは楽しくはあるのだが、この物騒な世界を生きる上では魔法を覚えてできることを増やしておかねばなるまい。
断腸の思いで断っているのだ。
「分かった。じゃあ、こうしよう。私があなたに魔術を教える。次にあなたは私を虐める。それでどう?」
いじめられたいのか?まあ、気絶するまで責めるよう懇願されていたから知ってたけど、ついにあけっぴろげになってきた。
眼前で気絶される側としては怖いんだよなあ。寝息が聞こえてこない数瞬が。
「うーん。分かった。妥協しようじゃないか。」
「くっそ、いつかメロメロにさせてやるからな。」
魔法の授業だ。といっても、それは魔力の流し方の授業である。体を流れる魔力は、丹田から出て丹田へと返るようだ。
ディアナが魔術を使うときは、まずこの体内循環を加速させる。体内で加速させてから外に打ち出すと、初速が増して威力が上がるようだ。
流し方もいろいろあるようで、ドリルのように回転させながら循環させると貫徹力が上がるなど、工夫のしどころは結構あるらしい。
「逆に言えば、丹田に魔力を送り込んで攪乱すると、相手の魔力制御を乱せるからいいぞ。」
そういうと、ディアナは俺の丹田に手を当てて、魔力を流し込もうとする、が上手くいかなかったようだ。またしても反射されたようだ。
あ、これ、知ってる。魔力開削に使うための性欲を爆発させる方法じゃないか。
ディアナは悪戯に失敗した子どものように、はにかんでごまかそうとしている。
「これはお仕置きが必要だね。」
俺はにこやかに笑った。
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