第11話 魔法と魔術

「はい、ディアナ先生。魔術と魔法は別物ですか?」


「ああ、いい質問だ。」


 そういうと先生はきりりとした声で言い放った。


「魔術は再現性あり、魔法はなし。以上だ。」


 ズコーーーーーーー。それだけ?いや、今の雰囲気なんだったんだ。


「まあ、そう落胆するな。鏡魔法は魔法ではあるが、歴史上存在していたことは確実だ。」


 再現性の無い理由についてはいくつかあるらしい。まず、奇跡とでも呼ぶべき事象を引き起こすおとぎ話としてしか残されていない魔法。死者蘇生とか時間遡行とかはこれに当たるらしい。


 もう一つは、使えたものがかつて存在していたことの痕跡は確認できるタイプだ。これは突然変異体質などで、血族に代々現れる魔法とは区別される。鏡魔法は5000年前には一人いたことが分かっているそうだ。


「なるほど、ちなみに、鏡魔法には教科書的なものって」


「ないぞ。」


 ですよねえ。何ができるかこれから模索していくほかないのか。


「ま、焦る必要もあるまい。この私が付いているからな。」

 

 ドヤ顔である。そうかな?頼りになるかな?昨夜のことが思い出される。

 弱弱しい姿しか見ていなかったからマヒしていたが、そういえば強い人なんだ。


「え?ああ、はい。」


「いや、もっと喜べよ!エルフェンイェーガーは貴重なんだぞ!」


 憮然とした態度のディアナ先生をなだめながら、俺たちは彼女の集落へ移動することにした。


 ここから3日くらいの距離にあるらしい。

 大部分の装備は置いてくようだ。まあ、あれだけの獣除け、虫除け機能があれば、放置しても問題ないだろう。


 道中は、なんら代わり映えしない森だ。茂みを切り分けて先に行ったと思ったら、すぐ目の前には既視感のある茂みなのだ。ディアナが先導してくれるから何とかなるかと思いきや、そのディアナは森に溶け込みやすい。


 服の色合いは赤にしてあって、見つかりやすくしているのだが、癖になった所作が、森に溶け込んでしまうのだ。

 ディアナという燈明を見失わないようにするのがとても大変だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る