第7話 そういえば

 先ほど花開いた笑顔はスマホで写メりたかった(死語)。

 しかし、胸がコンプレックスなのか。確かに絶壁だが、これほどの美人を男が放っておくだろうか。


「いや、その、キミモイイオトコジャナイカ。」


 恥じらいのゆえか、カタコトになってる。顔も再び真っ赤になってるが、彼女はそのまま続けた。


「まあ、助けてもらった恩もあるし、殺そうとした償いもある話だ。私が君の魔力開削を務めようじゃないか。」


「は、はあ。あの、回避する方策はないんですか?時間をかけるとか?」


 言葉をなくすなあ。こんなサクサク話が進むと、罠かと疑いたくもなる。確かめる術はないのだけど。


「時間をかける、か。それは止めた方がいいだろうというより、たぶんできない。」


「それはなぜ?」


「君の理性が持たないはずだ。聞くところによれば、その飢えはすさまじいらしい。」


「あなたは大丈夫なんですか。」


 当然の疑問だ。性犯罪者ならともかく、普通の男が理性を飛ばすことなどありえない。自分でタガを外しているだけだ。


「見くびってもらっては困る。私はこう見えて300年は生きているんだ。」


「300!見えないですね。」


「はは、そうだろう。仲間うちでも130歳だろうって言われるんだ。」


 あ、血の涙を流してる。まずい、まさかここで胸コンプレックスを踏み抜いたか。

 うわごとのように、「イインダ。」「ナレテイル。」「モンダイナイ。」と繰り返している。

 話題を変えよう。


「あの、そういえば、雨あがりましたよ。」


「エ?アア、本当ダあ。はっ。おい、敬語に戻ってるぞ。ため口でいい。」


 調子は取り戻してくれたが、俺がやってしまった。と言いつつ自分も語気が強くなってるじゃん。


「ああ、どうも慣れなくってな。300歳のお姉さんは人間じゃいないから。130ならぎりぎりいるんだけどね。」


「まあ、そうだろうな。」


 なんか機嫌がよくなった。でも人間でいう何歳なんだろう?とはちょっと聞けなった。


「よし、雨も止んだし、私のキャンプまで行くぞ!」


 俺はついていくことにした。

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