第5話 エルフの狩人 ディアナ

「と、俺の話はこんなところだ。」


 悪魔じゃないって信じてくれた?


「ああ。信じよう。先ほどは申し訳なかった。よく見れば人間の魔力だ。焦っていたのだ。その、見慣れない服装だったからな。」


 にこやかに視線を向けると、恥ずかしがっているのか、目を合わせてくれない。

 まあ、襲った相手が人違いだったらそりゃそうなるか。


「分かった。俺としては、はやく人里に行きたいんだが、ここからどれくらいかかる?」


「一人で行く気か?武装もなしに?正気か?野獣に言葉は通じないぞ。私と違ってな。」


 はは。確かに。そういえば、なんで日本語通じてるんだろう。発音は違うはずなんだよなあ。顔つきが日本語話者のそれじゃない。

 鼻筋は高いし、顎も小さい。まあ、いわゆるアジア人顔ではないな。


「じゃあ、今度はディアナのことも教えてくれないか?」


 さて、交渉のスタートだ。俺は話した。彼女はどこまで話してくれるだろうか。


「私か。私は見てのとおりエルフだ。ここからしばらく行ったところの集落に住んでいる。エルフェンイェーガーだ。」


「エルフェンイェーガー?」


「ん?知らないのか?あ?もしかしてそっちの世界にはそもそもエルフが居ないのか?すまんな。まあ平たく言えば狩人だ。森で狩猟採集をしながら、適宜魔物を狩るのが仕事だな。」


「なるほどー。・・・もしかして、エリートの方だったりします?」


 話を聞いている限り、自衛隊のレンジャー部隊の人みたいなものじゃないか、と思った。こういう命の危険がある仕事は、普通2人1組で行動するのに1人で行動している。

 まあ、あとおだてた時の反応を見たいというのもある。それはある。


「おい、いきなり敬語になるな、気持ち悪い。気にするな。・・・まあ、誰でも名乗れるジョブではないがな、幸運の賜物さ。」


 なるほど、謙遜するタイプか。不必要に褒めるのは危険だな。

 いや、褒められると照れて過剰に卑下するタイプかもしれん。

 今度は敬語を使わずに誉めてみよう。


 しかし、ディアナはばつが悪そうな顔をしていても、端正な顔立ちは崩れない。

 ストレートに言えば美人なのである。


 でも、何か忘れているような・・・

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