第36話 ラブホで幸せ
例の場所に亞里栖はいなかった。
さすがに毎度同じ場所にいるわけないか。
では、どこに?
俺は鬼のように連絡を続けた。するとやっと電話が繋がった。
『――もしもし、両ちゃん。どうしたの~?』
「どうしたの、じゃない。心配したんだぞ」
『あ~ごめんごめん。さっきまで瀬奈ちゃんと映画を見ていたからさ~』
「え、映画……?」
『うん。瀬奈ちゃんがど~しても見たいっていうから。あ、アニメね』
そ、そうだったのか。
それで電話が繋がらなかったんだ。……納得。というか、安心した。
しかも、傘を忘れたせいで映画館から動けないようだ。俺に連絡しようとしていたところだったらしい。
「じゃ、そっちへ迎えにいく。武蔵の運転だけどな」
『助かるよ~。待ってるね』
そこで電話は切れた。
俺は武蔵に指示を出し、映画館へ向かってもらった。
十分ちょっとで到着。
映画館の前には亞里栖と瀬奈がいた。
車から降り、傘を差して迎えにいく。
「お待たせ、亞里栖。瀬奈」
「両ちゃん!」
「ありがとう、兄さん」
よかった。二人が無事で。
俺はてっきり、変な奴に捕まってラブホにでも連れ込まれていたんじゃないかと。
その場合は問答無用で暴漢をぶっ飛ばすけどな!
「帰ろう、家に」
「え~、まだ遊ぼうよ」
「そうですよ。亞里栖ちゃんの言う通りです……!」
「こんな大雨なのに? どこで?」
二人は息を合せたかのようにこう言った。
「「ラブホ!!」」
マジかよ!!
どうやら、瀬奈は亞里栖にラブホのことを吹き込まれたらしく興味を持ったらしい。……まてまて、気まずいだろッ!
説得をしても、瀬奈は行きたいの一点張り。なぜー!!
実の妹とラブホって……!
いや、一周回ってアリなのか……?
葛藤が続くが、もう悩んでも仕方ないかもしれない。望みに生きるのが気持ちい人生ってモンだろ……!
武蔵にラブホへ行くように指示を出した。
「な……! ラブホですか!?」
「すまん、武蔵。無茶を承知の上だ。あと母には黙っていてくれ」
「……わ、分かりました。では出発します」
気まずそうに車を出す武蔵。
指定したラブホヘ向かってもらった。
ニ十分後。
隣町にあるラブホに到着。
ここは一風変わった館タイプのラブホだ。
ここで一夜を過ごすことになった。
「ありがとう、武蔵。先に帰ってくれ」
「では朝に迎えに参りますので」
「頼む」
気まずい表情で武蔵は去った。
それにしても……本当にラブホに来てしまった。不本意ながらも、こんな場所に。
亞里栖とならまだしも、瀬奈とも来ることになろうとは。
「行きましょ、両ちゃん」
「楽しみですね、兄さん」
二人から腕に抱きつかれ、挟まれる俺
なんだこのハーレムみたいな状況。
いやしかし。
そうだな。
もうここまで来ちゃったんだ。今更戻ることなんてできない。この周辺にまともなホテルもないしな。
一晩お世話になりますか……!
◆
気づけばベッドの上で起きた。
亞里栖と瀬奈に挟まれ、何事かと思ったが――そうだ。
昨晩はラブホで泊まったんだった。
二人とも幸せそうに眠っている。
ん……しかもハダカ!?
おい、待て俺。
もしかして、ヤっちまったのか!!
だが、覚えてないぞ。
なにも覚えていない……。
ああ、そうか。昨晩は酒で酔わされて……! 記憶がないッ!! ちくしょおおおおおおお……!!
けど、この感じからして俺は二人とシちゃったっぽい……と、思う。
ダメダ、分からん。
でも、俺は二人が好きだ。
ずっとこの生活を続けたい。その為にも事業をがんばる。
◆ありがとうございました!
いったん『完結』とさせていただきます。
気力があったら続きを書くかもしれません。
応援ありがとうございました!
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立ちんぼに義妹がいたので拾った 桜井正宗 @hana6hana
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