第26話 カードショップとラーメン屋

 近場のカードショップに入った。

 この辺りではかなり広く、種類も豊富な店だ。取り扱っているカードも様々だ。マイナーなトレカまで置いてある。


「なんでもありそうだ」

「これなら欲しいカードがそろえられそうだね」


 早くも亞里栖は、ガラスのショーケースを眺めていた。そこは高額カードが並ぶケースだな。一枚で十万円するカードが勢ぞろいだ。

 さすがに百万円を超えるカードは置いていないようだ。


 最近、トレカ強盗が全国的に多発しているから……仕方ないよな。


 十万円のカードでも十分危ないのだが、多少は並べないと見栄えが悪い。商売も大変なわけだ。


 そんなレアカードたちも吟味ぎんみしながら、ノーマルカードコーナーへ。

 安っぽいカゴの中にカードが乱雑に入っている。ここから好きなカードを選ぶ。ノーマルカードなら、一枚数円。安いものだ。


 カードを選別し終え、俺と亞里栖はショップを出た。



「……ふぅ。もうこんな時間か」

「お昼過ぎちゃったね」



 カード選びをしていたら、あっと言う間に時間が経っていた。だが、おかげで目的のカードは入手できた。最強のデッキが組めるだろう。


 しかし、対戦の前に飯だ。

 腹が減った。



「デッキ組んだり、決闘デュエルは月島家でやろう」

「うん。分かった」


「昼飯にしよう。この近くにラーメン屋がある。そこでいいか?」

「いいよ~」



 近所の人気ラーメン店へ向かった。

 幸い、今は混んでいない。

 並ぶことなく入店。

 食券を買ってカウンター席へ。

 俺はその間に武蔵に迎えに来るよう連絡をした。……これでヨシ。


 バリカタ豚骨ラーメンを食し、腹を満たした。やっぱり、このラーメン屋のバリカタは最高だぜ……!



「久しぶりにラーメンを食った」

「こんな美味しいラーメン屋があるなんて知らなかったよ。両ちゃん、こういうところ利用するんだね」


「まあな。たまに永倉に連れられてね」


「そうなんだ。ていうか、永倉さんってあんなモテモテのイケメンなのに、どうして両ちゃんと友達なの? 不思議」



 それに関しては俺も頭を捻っている。

 永倉は明らかに住む世界が違う。

 本当かどうか分からないが、金持ちのボンボンらしい。大学も暇つぶしで来ているようだ。多分、人生を楽しんでいるんだろうな。

 でも、そんな男が俺を構ってくれる理由は定かではない。もしかしたら、俺との関係も暇つぶしなのかもしれない。



「さあ、分からん」

「そっかー」



 今度聞いてみるかな。なんて考えていると、迎えが到着した。


 高級車が目の前に停まった。武蔵だ。



「迎えに上がりました、相良様」

「よく来てくれた武蔵。月島家まで頼む」

「では、お車へ」


 後部座席のドアを開けてくれる武蔵。細かい気遣いに感心する。さすがホンモノの執事。こんな若いのにしっかりしている。



 月島家へ帰宅。



 早々、月島のおばさん――ではなく、本当の母さんが駆け寄ってきた。以降はお母さん・・・・と呼ぶことにした。



「両ちゃん、どこへ行っていたの?」

「ごめん、お母さん。亞里栖を迎えにいっていた」

「そうなの。私との関係は……」

「車の中で伝えた」



 俺は肝心なことを忘れていた。

 亞里栖に本当のお母親のことを伝え忘れていたのだ。だから、ここへ来る途中で全てを話しておいた。

 無論、亞里栖はショックを受けていた。だが、亞里栖は本当のお母さんのことを悪く思っていなかった。今眠っている母さんを助けてくれていたし、今まで支援もしてくれていたからだ。


 それに家も無償で提供してくれている。恩人だ。



「あの……その……」

「亞里栖ちゃん、あなたも家族の一員よ。遠慮なく家を使ってね」

「嬉しいです。ありがとうございます」



 これで解決……とはいかない。

 俺は、お母さんに『婚約』の件を相談することにした。

 瀬奈さんとの婚約を破棄するために。

 瀬奈さんは実妹のはずだから。

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