第27話 いつでも義妹を愛せる
婚約のことを話すと、瀬奈さん本人と話してくれとお母さんは言った。
ならば仕方ない。
直接話し合うしかないだろう。
武蔵に頼み、瀬奈さんを呼んできてもらった。
「お待たせしました」
「瀬奈さん、大切な話がある」
「……それは亞里栖ちゃんも関係ある話ですか?」
「そうだ」
「分かりました。では、こちらへ」
瀬奈さんの後をついていく。
庭あるテーブルに案内され、椅子に座った。
そこは花園が広がっていて開放感があった。……な、なんだか貴族みたいな。
いったん落ち着いて、俺は改めて話をした。
「まず、俺の母さんを助けてくれて感謝する」
「いえ、いいのです。私の母の妹さんですし、当たり前のことなのですから」
「それで……お世話になっている身で申し訳ないんだが」
「分かっています。婚約の件ですよね」
「あ、ああ……話が早くて助かる」
落ち込む瀬奈さん。だよな。当然期待していただろうし。でも、俺は亞里栖が好きなんだ。もうこの気持ちは変えられない。
「実は、さきほどお母様から聞かされたんです」
「ま、まさか」
「はい。相良さんが兄だと」
その言葉に亞里栖は驚く。
「そ、そうだったんだ」
「すまん、亞里栖。俺もちょっと前に聞かされたからな。だけど、亞里栖も瀬奈さんも……二人とも大切な妹だよ」
俺がそう気持ちを明かすと、瀬奈は納得した。
「私が実の妹で、血が繋がっていた。だから結婚は不可能……なんですよね」
「そういうことだ。父親のことは分からんが」
「はい。実は私も分からないんです」
「マジかよ」
「お母様は話してくれないんです。でもいいんです。ここまで育ててくれたので。それに、相良さんがお兄さんと分かって嬉しかった」
涙を零し、けれど笑顔を向けてくれる瀬奈。
俺は申し訳ないという気持ちでいっぱいだった。だが、これで俺と亞里栖は付き合える。いや、とっくにそういう関係だな。
婚約は破棄となった。
これで自由となり、俺は亞里栖のことだけに集中できる。
「ねえ、両ちゃん。良かったの……?」
「なにが?」
「瀬奈ちゃんのこと。泣いてたよ」
「そりゃ心が痛まないと言ったらウソになる。すっげえ辛いよ。だけど、それでも俺は亞里栖を選んだ」
「……両ちゃん。そ、そっか。そんなにわたしが好きなんだ」
「当たり前だ。あんなにシたんだぞ……」
「お金の関係だったけどね」
「昨晩は違うだろ?」
「まあね。これからも両ちゃんを愛するよ」
嬉しいことを言ってくれる。
俺は亞里栖の体を手繰り寄せた。そして、キスをした。亞里栖は抵抗なく、俺を受け入れてくれた。
優しく、激しく、甘い時間を過ごしていく――。
まだ借金返済だとか、亞里栖の復学だとか問題は山積している。だが、きっとなんとかなる。
お母さんが俺を最大限支援してくれると言ってくれた。
コインパーキング事業だけでなく、他の事業も譲ってくれるらしい。俺は大学を中退して本格的な“経営者”になると決めた。
その方が亞里栖も瀬奈も、そして母さんとお母さんを幸せにできるからだ。
一刻も早く稼ぎ、みんなを安心させたい。
それと亞里栖と毎日ラブホへ行きたい。
愛し合いたい。
まだまだ道のりは遠い。
だけど今はこれでいい。
「亞里栖、これからも一緒にがんばろう」
「うん。力を合わせていこうね!」
今夜もラブホへ向かった。
もうあの場所で義妹を拾う必要はない。
これからはいつでも亞里栖を愛せる。
◆ありがとうございました!
少々駆け足になりますが【完結】とさせていただきます。
気づけば五万文字近くも書いておりましたww
皆様の応援のおかげです!
今後、おまけエピソードは追加したいと思います。
他にもたくさん公開中なので追っていただけると嬉しいです。
こちら↓
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます