第18話 目を覚ましたら義妹が俺の上に

 いったん部屋へ戻った。

 ひとりになりたくないという理由で亞里栖も俺と同じ部屋に。

 そうだろうな。


 母さんがあんなことになっているなんて……。ショックだ。信じられねえ。



「両ちゃん……わたし」

「俺も辛いよ。でも、母さんはまだ生きている。きっと良くなるさ」

「……うん。瀬奈ちゃんに感謝だね」

「ああ、まさかこんな繋がりがあるとは思いもしなかったけど」


 意外すぎるというか、世間は狭いというか。

 なんであれ、母さんが見つかって良かった。意識不明の重症ではあったあったものの、まだ死んではいない。


 月島家にかくまわれている以上は、安全だろう。


 つまり、親父も保険金を手に入れていないはず。


「ねえ……これからどうしよう、両ちゃん」

「うーん。今は月島家にいる方が安全だろうな」

「だよね……」


「もし親父がまだ生きているのなら、母さんや亞里栖を狙う可能性が高い」

「お義父さん、なんでお義母さんとわたしを狙うんだろう?」


 不安気に吐露する亞里栖。

 その疑問はずっと俺も考えていた。



「俺の推測だが、親父はもともと母さんの保険金目当てだったと思う」

「え……」


「でなければ、あんな酷いことしないはず。でも、母さんは“行方不明”になってしまった。結果、保険金は受け取れずに終わったんだ」


「さっき瀬奈ちゃんが言っていた情報だね」


「そうだ。だけど親父は諦めなかった。今度は亞里栖の体で稼ごうとしたんだ。つまり、まだ親父は諦めていないはずだ」


「うそー…やだ……。気持ち悪い」



 あの親父のことだ。借金の取り立てに追い詰められているとはいえ、なんとか逃げ出しているだろうな。でなければ、とっくの昔に東京湾に沈められているはずだ。


 電話では捕まったように聞こえたが、実際はどうなったか分からない。


 もしかしたら、上手く逃走しているだろう。となれば、家に戻るのは危険すぎる。そもそも、あの実家にいたら取り立てが毎日来るだろうな。



「亞里栖、立ちんぼは止めて俺と一緒に月島家で暮らすんだ」

「両ちゃん……でも、わたし稼がなくていいの? ほら、高校だって中退しちゃたし、なにも残ってない……」


「高校なら入り直せばいいさ。月島のおばさんに頼めば、なんとかしてくれるさ」

「編入ってことだよね」

「この場合はそうなるな。亞里栖、勉強はできるだろ……?」


「う、うーん……たぶん」



 自信なさそうだなぁ。

 正直、俺は亞里栖の学力がどの程度なのか分からない。他人期間が長かったせいで。



「それか通信制にする?」

「あ、それいいかも! 一応、高卒取れるんだっけ」

「らしいね。スマホで調べたよ」



 通信制は、ほとんど学校に通う必要がなく、パソコンで学ぶシステムらしい。ネットさえあれば、いつでも授業が受けられるわけだ。


 失ったものを取り戻す意味でも、亞里栖にはぜひ高校生に戻って貰いたい。



「少しだけ考えさせて」

「分かった」



 俺は、ふかふかのベッドへ横になった。

 ……さすがに疲労が。

 亞里栖も同じく寝転がった。


 こんなに寝心地が良いと眠ってしまいそうだ。いや、もう眠っていた。


 ここまで色々あって疲れが溜まっていたらしい。の●太くんの0.93秒並みの速さで俺は夢の世界へ堕ちた――。



 ◆



 目を覚ますと亞里栖が俺を襲っていた。


 ん……襲っ――!?



「……両ちゃん、このまましよ」

「うわ!? 亞里栖、いつの間に……って、ああ、そうか。そういえば一緒に寝落ちしたんだっけ」



 あれから何時間経った?

 時計を確認したいけど、下着姿の亞里栖にまたがられているため、身動きが出来なかった。まさかこんな騎乗みたいな体勢になっているとは……目覚めて、いきなり興奮度マックスだ。

 の●太くんも驚きの早撃ちをしてしまいそうだ。


 いや、だめだ!


 月島家でこんな不適切な行為をしてバレたら、殺されかねん!

 俺と瀬奈さんの関係が悪化したら……いろいろとマズい気が。一応、婚約したし……? いや、まだ確定ではないけど。


 そう、まだ正式に婚約を結んだわけではない。

 あくまで口約束。

 婚約破棄だって出来るはずだ。



「……ま、まて、亞里栖。そんなに腰を動かしたら、俺…………もう」

「だーめ。まだ我慢して」


「…………くぅ」



 悪魔的だァ……!

 けど、いい。これはこれで最高の目覚めだ。

 このまま荷電粒子砲をぶっ放してもいいかもしれない……。いや、だめだ。さすがにマズイ。今は大人のゴムを装備していない。

 あまりに危険すぎる――!


 でも、でも、でも……!


 俺は亞里栖が好きだから、このまま快楽に溺れるのも……。



 結局俺は欲望に負けた。




 …………ヴッ。

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