第12話 義妹の真実
「結婚って話、本当かい?」
「はい。お母様がそうおっしゃっていたので」
目が本気だ。
少なくともウソをついている感じはない。月島のおばさんめ……なんてことを! そんな話はまったく聞いていなかったぞ。
これは一度、話しをしなきゃならないようだな。
「わ、分かった。おばさんに聞いてみるよ」
「良かったです……!」
そこまで期待の眼差しを向けられるとはな。
しかし、亞里栖には親父が帰って来たこと、家に住めなくなった件を伝えねばならない。
今後の生活をどうするかも。
「……」
「あの、相良さん。どこか具合でも悪いのですか?」
「実は、家庭のことで問題が発生中でね。親父が帰ってきて住めなくなった」
「え……。どうしてです?」
亞里栖の友達である月島さんになら、話してもいいか。
俺はこれまでの詳しいことを月島さんに話した。
三年間、亞里栖とは他人を続けていたこと。
今日になって親父が帰ってきて、亞里栖に体で稼がせようとしていることなど……。
ただ、俺と亞里栖の肉体関係は割愛した。
「――というわけなんだ」
「大変なんですね。……そうです! よければ住む場所が決まるまで、私の家に泊まってください」
「え、いいのかい?」
「はい。我が家は空き部屋がいくつもあるので。お母様も喜ぶかと」
そうだな。月島のおばさんには一度、話しをする必要がある。主に結婚のことを。
となると、早く亞里栖を見つけださなければ。
あの親父に捕まったら地獄。終わりだ。
「ありがたい。それじゃ、俺は亞里栖を探しに行く」
「私も手伝います。連絡先を交換してもらってもいいですか?」
「助かる。人手は多い方がいいからね」
月島さんのメッセージアプリのIDを追加登録した。
これでいつでも連絡が取れる。
公園で別れ、俺は再び街中へ。
歩きながらも亞里栖へ電話とメッセージをストーカーのごとく送り続けるが、無反応。アイツ、スマホを見なさすぎだろ。
それとも電源を切っているのか、電池切れか?
こうなったら……。
ああ、そうだ。
亞里栖の通う『高校』へ問い合わせてみるか……!
俺ってば頭良い。
もしかしたら学校へ行った可能性がある。
いやだが、亞里栖の高校ってどこだっけ……。制服は見かけていたけど、どこの学校かなんて分からない。
となると……お、そうだ。
月島さんに聞けばいいんだ。
さっそく電話を掛けてみた。
『はい、月島です』
「俺だ。相良だ」
『亞里栖ちゃん、見つかりましたか?』
「いや、違うんだ。亞里栖と月島さんの通う高校の名前を聞きたくてさ」
『え……』
なんだか妙な反応を返してくる月島さん。なんでそんなに歯切れが悪いんだ……? 二人は高校友達じゃないのか?
「どうした?」
『その、亞里栖ちゃん……高校は辞めちゃったんです。相良さん、ご存知なかったのですね……』
なッ!
ウソだろ。亞里栖が高校を辞めていた? つまり中退ということか。……おいおい、だって毎日制服を着ていたぞ。
あれは誤魔化しだったのか……!
「な、なんで!?」
『辞めたの自体は一週間前です』
「最近じゃないか!」
『はい。生活費や学費が払えないとかで……』
「そ、それは……おかしい。俺がある程度は費用を出していたはずだ」
『でもお金がなくて辞めちゃったんです』
どういうことだ。
亞里栖と関係が修復される前の金銭的な負担は、俺が黙って支払っていた。おこづかいだって最低限はあげていたぞ。
なのに“立ちんぼ”をやるほどに追い詰められていたってことか……。
なんてこった……。
俺はとんでもない勘違いをしていたのかもしれない。
亞里栖と連絡が取れないのも、もしかして……。
ヤバイ、嫌な予感がしてきた。
まさか闇金だとか、そんなのに手を出していないだろうな……!
「一刻も早く見つけ出さないと!」
『もしかして……お父さんのことかもしれません』
「親父? なぜ?」
『前にぽろっと言っていたんです。金銭的要求をされていると……。兄から貰ったお金は全てそのまま渡していたみたいです』
「…………!」
それを聞いた瞬間、俺は脳がブチッと切れた。
あの……クソ親父!
あのクズ野郎!!
俺の知らないところで、亞里栖を利用していやがったんだ。朝堂々と帰ってきたのも、金の為だ。そうだ。自ら言っていたじゃないか。
金が欲しいとな。
つまり、亞里栖は時間差で家へ戻っている可能性が高い……!
だとすれば絶対に許さん!!
亞里栖を救わねば……!
あんな地獄へ落とさせはしない。
これ以上、不幸な目に遭わせてなるものかよ。
もし、亞里栖に泣かせるようなことをしているのなら、俺はクソ親父をぶっ飛ばす。
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