くらえ!テレパシー

・くらえ!

「トモちゃん」の書き下ろしオープニング。この曲も、ライブ映像で初めて聴いた時と、アニメを観てから聴くとでは、印象が変わった。いい曲だな、と漠然と思っていたけど、物語の内容を、面白い切り口で歌にしたな、と考えが変化した。「お前たちが踊るんかい」の愉快なダンスが見れるMVもとてもいい。


男性ボーカルとしてはキー高めだけど、緑仙が歌う場合は少し低いかな。原曲と比べて、音域的に声のトーンが少し大人しめだから、聴き味も違う。

パンダと踊るサビのダンスは、MVの動きをところどころ取り入れてる?テレパシー送る前に手をぐるぐる回して準備するところかわいい。


「お客さんにテレパシーを送る」案、とても面白いし楽しい。ライブに来るお客さんは、よっぽど音楽を嗜んでる(たしなんでる)人じゃないと、自分から能動的にリズムに乗ったり、アクションしたりするのはハードルが高い。だから、演者側と交流できる仕掛けがあると、音楽に参加できて楽しいんだよね。ちょっと恥ずかしさは残るけど。

この曲は1番のサビ終わりから、けっこう間が空くから、そこを埋める意味でも上手な演出だなと感じた。


「ジャブ・ストレートなら命中するのに

ハートめがけても 今日も的外れ

パラレルジグザグギクシャクチグハグ」


アニメもしくは原作の漫画を読んだ前提で書くけど、あの作品を表現するのに「テレパシー」を選んだのは、面白いなと思う。原作にテレパシー要素があるわけじゃないし。

男顔負けのパワーがあるトモがジュンにアタックするけど、上手くいかず拳が出る一連の流れを思い出す歌詞。

Aメロは曲調もコミカルで楽しい感じ。ちょっと少年っぽい緑仙の歌い方がいい。「ジャブ・ストレート」の言い方が特に好き。スクリーンの映像はわりと幾何学的な模様だけど、トモとジュンのやり取りが頭に浮かんでくるのが不思議。

「パラレル〜」であたふたする振り付けがかわいい。


「こっちを向いて 寄り添うとき

その意味が 君は違うけど

ずっとこのまま いられたら

変わってく気持ち もどかしい」


Bメロに入ると曲調が変化して、爽やかな雰囲気になる。歌詞もあわせて、二人のぎこちないけど青春してる感じが出てるなと思う。

ジュンが好きなトモに対して、ジュンの方は今までどおり友だちの関係でいたい。トモは女の子として見てほしい。

「トモちゃん」が面白いのは、トモに対して恋愛感情が芽生え始めてるのを、ジュンがうすうす気づいていくところ。友だちでありたいジュンにとって変わっていく気持ちはもどかしい。


「振り向きざま くらえ!テレパシー

同じこと感じられるなら

蹴飛ばしたい 邪魔なデリカシー

全て知りたい 全て知りたい AH」


サビに入ると今度は切ないメロディになる。どんどん曲の流れが変化するところが聴いていて楽しい。「振り向きざま」のあたり、手を後ろで組んで小さなステップを踏む振り付けは、想いを伝えたい相手の様子を伺うトモに見えてくる。「蹴飛ばしたい」では小さくスキップして何かを蹴飛ばす素振り。


サビの歌詞は、「トモちゃん」だけじゃなく、いろんな人に当てはまる普遍的なテーマだと思う。自分と相手が同じ想いを共有できたなら。想いを伝えようとする時、自分自身のデリカシーが邪魔をして一歩踏み出せない。

だから、自分の想いが伝わるように、と願っていろんなことをする。まるでテレパシーをおくるみたいに。


「誤魔化せない ずっと

隠しきれない きっと

秘密 叫びたい AHHH」


自分が徐々に感じ始めた恋愛感情に蓋をするジュンのほかにも、作中の多くのキャラに当てはまる歌詞。ここにきてもう一度盛り上がる曲の展開もとてもいい。


「くらえ!テレパシー

テテテテレパシー

テレパシー」


お客さんにテレパシーを送るべくステージ上をドタバタ走る緑仙が楽しそう。お客さんも楽しそう。原曲にはテレパシーみたいなグニョグニョした効果音や、チグハグな関係を思わせる間抜けなギターの音など、細かな遊びがたくさん詰め込まれている。緑仙の、最後の「テレパシー」の言い方がすごくツボ。これがめっちゃ好き。太い声の出し方、声の伸びがとてもいい。作品も素晴らしかったし、ライブの仕掛けも楽しかった曲。

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