モノノケ・イン・ザ・フィクション

・モノノケ

聖槍から続いてロックナンバー。コーラがぶ飲みしてる渡辺さんが印象的なMV。インタビューで話していたボカロっぽさは、フレーズ単位だと「そうかも」と思える箇所はあるけど、全体通して聞くとやっぱりロック。


聖槍よりさらにテンポが速い、疾走感のある曲。スクリーンの映像も、マンガの集中線が高速で流れていくみたい。


原曲だと、.△さんの歌い方はすごくロックだけど声質はけっこう柔らかめ。緑仙の場合、サビは特に声の伸びの良さが目立って聴きごたえがあるし、かっこいい。


アニメのために書き下ろされた楽曲で、音楽的にも、歌詞の内容も世界観を表現している。書き下ろしと知ったから、アニメの方を見てみた。シーズン1を観たけど面白かった(そもそもミステリが好き)。

ブルーレイで初めて、緑仙がこの曲を歌っているのを観た時と、アニメを観終わった時だと、この曲に対するイメージがかなり変化した。


「七転八倒で到着

既存理論でカクメイ

誰もが予測不能の連鎖

虚ろう瞳に映る

有象無象は御免

この世の理、手繰って」


.△さんがインタビューで「この曲はミステリとしての作品性と琴子のひたむきさを表現した(意訳)」と話していた。AメロやBメロは、特に作品性を表した部分だと思う。

白蛇と対峙した時、ネット上の人々と対峙した時、さまざまな推理を展開しながら真犯人の狙いを明らかにしていくストーリー。既存の理屈を操り、想像できない真実(ウソ)を導き出す。


「モノノケトケモノ

ヒトも、割と同じ」

作中では、ミステリというジャンルもあって人間の後ろめたい姿も多く描かれる。鋼人七瀬のエピソードでは、興味本位で噂を掻き立てたり、人の4をただのスクープとしか捉えていないような記者が生前の七瀬(アイドル)を追い詰める様子とか。

主人公の琴子は一眼一足だし、九郎は身体がぐちゃぐちゃになっても元通りになる特異体質だし、それらを指して「ヒトも割と同じ」と書いたともいえそう。


「今、走る言葉がつまづいても

くだらない話でもちゃんと聞いてよ

例え細くても ほどけないように

不確かな 未来でも

掴んで撃ち砕け」


例えば、琴子は虚構を組み立てて問題を解決する。その時に言葉に詰まったとしても、自分の話を聞いてほしい。解決することが難しい問題でも、九郎の力と合わせて、未来を掴み取るから。そういう琴子の姿を表現したようにも見える。


「今、溢れる言葉頼りなくて

拙い自分のことちゃんと伝えよう

例え儚くても 壊れないように

不確かな 二人でも

一緒にいたいから」


1番のサビの歌詞と合わせると、琴子の別の一面が見えてくる。自分を気遣ってくれる九郎に対して、自分の想いを伝えきれない場面が作中で何度かあった。最終話の「でも、お前は花よりきれいだから、どこにも返してはいないだろう」という九郎の言葉に、返答に詰まったシーンが典型的。琴子の不器用さを表す歌詞。


「今、走る言葉がつまづいても

くだらない話でもちゃんと聞いてよ


今、溢れる言葉頼りなくて

拙い自分のことちゃんと伝えよう


誰かより不器用でもね

私には私なりの輝き 見つけたら

光に任せて」


これらの歌詞は、琴子だけじゃなく、緑仙の心情も代弁してくれてるのでは、と思う。

話すことは苦手だけど、自分の話を聞いてほしい。拙くても伝えたいことがある。不器用な自分にも、自分なりの輝きがあるはず。


何より、このアニメ(原作含め)は「ウソ」によって問題を乗り越えていくストーリー。例え作り上げた自分の姿だとしても、それで運命を掴み取る。少し考え過ぎなメッセージの受け取り方かもしれないけど、自分はそう感じた。

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