ロウワー

・ロウワー

公式にアップされてた「ボクのあしあと〜」のアーカイブを見ました。

ミズキに関連の深い曲が、セットリストに2つ入ってる。りゅしぇんはミズキに共感や、それに近いものを感じたのでは、と思った。

二人の共通点は、「期待を裏切られてきたこと」。信じていた人や、信じようとしていた人が目の前からいなくなっていったこと。伝えたいことを口に出せなくなってしまったこと。

「振り付きで歌いたい」ので選んだ曲、とインタビューで話してる。ぬゆさんのチャンネルの方のMVでは、魔女とメイドが手を取り合って踊るシーンが何度も出てくる。実際のステージでは、「踊る2人の姿」を振り付けで表現していて、すてきだった。踊りをつけることで、表現出来ることがより広がる。歌と同時にこなすのはとても難しいはずだけど、とても良いステージだった。

歌い出しで、手を片方ずつ頭の上に挙げる動作が、しなやかできれいだった。

スクリーンの映像はぬゆさんのMVに登場したモチーフが中心に流れてく(魔女の帽子、雑木林など)。椅子は、ぷろせかの方にもあった小道具。

映像の始めの方に出てくる「握り合った手と手」。りゅしぇんの振り付けも、自分の手を重ねて握って、ぐるぐると腕を回し、離れていく。離ればなれになる2人を、立ち位置を変え後退り(あとずさり)で再現するシーンもある。


「言いかけてた事が一つ消えてまた増えて

背中に後ろめたさが残る

従いたい心根を吐き出さぬように込めて

胸の中が澱のように濁る」


自分が抱えてることを打ち明けようとして、言えない。受け入れようとしてくれてた相手(えな)に対する後ろめたさが残る。

自分と本気で向き合ってくれる人の存在のおかげで、打ち明けたいと思えた。けれど、脳裏に刻まれた記憶、過去に受けた裏切りの仕打ちがその邪魔をする。


「受け止めたいことが自分さえ抱えられず

持て余したそれを守っている

霞んだ声はからからに喉を焼いて埋め尽くす

何を言うべきか分からなくて」


マイノリティであることによって起こる周囲との摩擦を恐れて、他人に言えない「秘密」として抱えている(特に、自分を受け入れてほしい相手に対して)。本当は言いたいのに、言うことが叶わない矛盾が、発することのできる言葉をどんどん減らして、なくなっていく。


「感じてたものが遠く放たれていた

同じ様で違うなんだか違う

何時まで行こうか 何処まで行けるのか

定かじゃないなら何を想うの」


感じてたものを放つとは、言葉にするということだろうか。口に出した言葉は、自分が思っていた通りのものじゃなかった。誤魔化しや嘘、または周囲の誤解とか。

ミズキと25のメンバーとの関係は、いつまで続けることができるのか。仮に秘密を打ち明けたとしたら。関係性が続くことが定かじゃないなら、何を思うの?というミズキ自身の自問自答に聞こえる。


「僕らが離れるなら 僕らが迷うなら

その度に何回も繋がれる様に

ここに居てくれるなら 離さずいられたら

まだ誰も知らない感覚で救われてく」


僕ら(4人)が離れ離れになりそうになったり、迷ったりした時でも、また同じように過ごすことが出来れば、という願望が歌われている。みんなが一緒にいてくれたら。離さずいられたら(秘密を「話さずに」いられたら、とかけてる)。

まだ誰も自分の秘密を知らない、という感覚が、ミズキを救っている。すごい歌詞。


りゅしぇんはこの歌に、どのように自分を重ね合わせたんだろうか。「僕ら」が指すのは、分離した自分自身か、それとも自分と視聴者の人たちか。


「平穏とは消耗を以て代わりに成す

実際はどうも変わりはなく

京楽とは嘘で成る」


メンバーとの変わらない関係性を保つために、いつも通りの自分を演じて内心ではすり減っている。今現在得ている幸せは、そうやって吐く嘘によって成立している。


「何時まで続くだろうと同じ様に同じ様に呟く

いま忘れないよう刻まれた空気を

これから何度思い出すのだろう」


幸せな状態がこれからも続くだろうか?という不安と、秘密を抱えたまま苦しむ状態がこれからも続くのだろうか?という失望、2つが感じられる歌詞。


「まだ誰も知らない感覚で僕の生きている

すべてを確かめて

正しくして」


既存の考え方や価値観に囚われない思考で、僕の生きているすべて、僕という存在を捉えて肯定して。という、とんでもない(いい意味)歌詞。アーカイブを観た後に改めてこの曲を聴いて、ここで思わず声が出たくらい。


2番のBメロは振り付けが穏やかで、歌も歌いやすかったのかな、と思った。「都合の良い願いを同じ様に〜」から、歌うメロディラインが、バックのピアノと響き合ってとてもきれい。セットリストの中でも、独特の空気感がある曲だった。

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