第4話



「相手の学校?弱小だよ?うちら?弱小だよ?」



全然詳しくないので今日の相手は強いのか聞いてみたら、そんな返答が返ってきた。相手は弱いらしいけど、同じくらいウチも弱いらしくていい勝負らしい。

おかげでよく相手して貰っているらしく、勝手知ったる仲だとか。

「ふむ。私の指導は厳しいが、ついてこれるかね?」

「あ、ムリ」

隣りでは山瀬さんが、バックミラー越しに部員全員が頷いてるのが見えた。

「き、君たち……」

横で山瀬さんが慌てて、手をわたわたと振る。

「いや、練習は真面目にやってるよ?勝てたらそりゃ嬉しいし。

でも上を目指したいかというと……やっぱり楽しみたいが優先だから。メンバーもギリギリだしね」

「そっかー、なら仕方ないか」

「というか、そもそも。みのりん、初心者ですらないじゃん。なのに指導なんて言われましてもね~?」

「あだ名で呼ぶな、コーチと呼べ。だから今勉強中なんだってば」

「実践の伴わない、頭でっかちな理論で言われましてもねぇ~?」

「くっ。科学的裏付けのない経験則だけで導き出された方法論もどうかと思うよ?」

私と山瀬さんが少々引きつった顔で微笑み合っていると、山瀬さんと同じクラスの湯野さんが慌てて割って入った。

「ちょっと、なんで山瀬も張り合っちゃうかな?……えーと?皆川先生、困ったら相談させてくださいね?」

「湯野さんってば、オトナだね。山瀬さんももう少し大人になって先生の事を敬いなよ?」

「……そうですね、先生。少し馴れ馴れしくし過ぎました。ご教授ご鞭撻お願いします」

その山瀬さんの態度に私は焦る。

「ちょっと、急にオトナにならないでっ!?私が一番言動幼稚になっちゃたじゃん!」



「なんか適当に手持ちの曲流してるけど、聴きたい曲あったら変えていいからね?」

会話が途切れたので、みんなに確認を取る。まあ、今更なんだけどね、もうすぐ着いちゃうし。

「んー、いいっすよ先生。結構懐かしくて新鮮だし」

と、部員の一人が言った。

な、懐かしい……私が大学の頃聞いてた曲なんだけど。いや、でもその頃小学生か。じゃ、懐かしいか。悲しいけれど。

若いつもりでいたけれど、これが現実なのね(泣)

「ちょっとみのりん、勝手に傷つかないでよ?私は好きだよ、みのりんの選曲」

「ですって。みのりん先生、こういう曲聞かれるんですね」

「ううぅ、山瀬さん、湯野さん、ありがとう。あだ名じゃなくて先生って呼んでいいよ?」

二人に慰められて少し気持ちを持ち直す。

「もういい!先生だけ趣味を晒して不公平だ!帰りはてめーらの好きな曲を晒せー!」

と私に提案されて部員たちは目配せする。

「……そういや知らないな?」「んー、どれにしようかな?」「特にないんだけどなぁ」

と、ボソボソと零す。

そんな事を喋って姦しくしていたら、車は練習相手の高校についた。

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