chapter13:What is a plan?

「おいアラタ、未知の計画って一体...」


「確かに気になる言い方だな、まるで私たちで実験でもしてるかのような言い方じゃないか。」


皆様はアラタ様の言い分に驚きを隠せなかった。まるでこの救出劇も何者かが意図的に仕組んだような含みのある言い方。だがまだ何も証拠はもちろん手がかりすら一つも見つかっていない状態ではさすがにこの陰謀論もただの妄想でしかないとは考えた。


だがもしこの救難信号から始まるマリスへの上陸が...何者かの実験だとしたら...


「とりあえず船に戻ろう!それ以外に道はないはずだろ!」


「そうだな、入り口まではあと少しだ。みんな急ぐぞ!」


カスミ様やマコト様が皆様を奮起させて入り口に向かって急いで戻ることにした。すでに先ほどの通路まで戻ってきた私たちは周りにヒストリッカーたちがいないかを随時確認しながら戻って行った。私は記憶データベースを振り返りながら事を整理することにした。


まず私たちはここマリスからの救難信号を受けて救助のためにきた。その救難信号を受け取ったのは船長様だ。だが救難信号はコマンドメントの本社にまずは通達がいくはずだ、マリスはコマンドメントが所有する惑星だからだ。その救難信号から数日でマリスに到着をしたが私たちが着いたころにはすでに開拓者は全滅、ヒストリッカー達の巣にされてしまっていた。


ヒストリッカーたちは寄生生物だ、その寄生する宿主はもちろん開拓者。だが元々存在するはずはない、なら一体今いるヒストリッカー達は一体誰が連れ込んだのか、もしくはだれが作り出したんだ?


まだ情報が不確かなことばかりだ、もう少し情報が欲しいところだ。


「ホープ、入り口まであと最短でどのくらい?」


ではやはり考えられるとしたら、私が知っている存在の中に今回の事件を引き起こした


「ホープ!」


呼ぶ声が聞こえたのでデータベースを切り、横を見るとカスミ様が私に向かって話しかけていた。


「すみませんカスミ様、入り口まではあと数分で辿り着きそうです。」


「わかった、レナちゃん捕まってて!」


レナ様を抱えて走っているカスミ様はさらにスピードを出して走っていく。アラタ様やマコト様も着いていくがツトム様は少し息を切らしていた。体を鍛えているツトム様が恐怖に怯えているからとはいえ全員の中で1番最初に息を切らしているのは何か変な気がするが私たちは今は急いで戻ることを先月に動いていたから気にも留めなかった。



そしてついに入り口まで辿り着き建物の外に出ることに成功した。囲まれた時は危うく全滅の危機もあったがこうして生き延びることができたのは不幸中の幸いと言うのだろうか。


「レナちゃんもう安心だよ、ここまで来ればあとは向こうに私たちの船があるからそこに避難しよう。」


「うん...」


「ほんとに悲惨な現場でしたね...

開拓者のみなさまはお悔やみを...」


アラタ様が静かに目を瞑りながら祈っているとマコト様が思いがけないことを口走った。


「おい、この星を出る前にセンチョーに許可を取って核爆弾を落とすぞ。」


「か、核爆弾!?」


「そうだ、さすがにもうこれ以上の被害者を出すわけにはいかない。下手したら宇宙空間ですら生き延びそうなやつを逃す気か?」


確かに人為的に開発されただろうヒストリッカーは下手したら人類どころか地球、はたまた宇宙が侵食されそうな勢いで増殖していきそうだ。正に生物の進化や歴史を真っ向から否定しようとする存在だ。


「確かに今ならまだ間に合うのかもしれないし、さすがに核を放てばあいつらも全滅するとは思うね。」


「そうですね、みなさんの言う通りあの生き物をここで食い止めなきゃいけないですよね。」


「意見がまとまったな、それじゃあ船に戻るぞ。」


そうして私たちは船を止めている場所まで戻り、検査が終了次第すぐにこの星を脱出すると決めた。




      ーーーーーー


ついに船にまでたどり着いた私たちは通信を取ってハッチを開けてもらうように指示することになった。


『こちらアラタ、通信室応答お願いします。』


すると先ほどと同じようにミスズ様が応答に出た。


『こちら通信室です。どうぞ。』


『今僕たちは船の前まで帰還しましたのでハッチの解放許可をお願いします。』


『はい、了解です。今ハッチを解放します。』


やり取りを終えてすぐに船のハッチが開き、私たちは中に帰還することになった。まずは入り口に備えられているメディカルチェッカーによって感染症や寄生虫などにかかっていないかを検査することになっている。このメディカルチェッカーは【OWLDO】が担当している。


「レナちゃん、そしたらまずはその青いラインが引いてあるところに立ってみて。」


「うん、わかった。」


レナ様は3.4m歩いたところに引いてある青いラインに立ち、メディカルチェッカーが線上の光を当てていく。その線を頭から足のつま先まで念入りに当てていく。すると横にディスプレイが表示され、レナ様の体を表示していった。何か異常があればその部位に赤く光るとのことだったが特にレナ様は何も異常はなかった。


「よかった、これで船内を自由に歩けるね!」


「うん...」


引き続きマコト様、アラタ様、カスミ様の順番で検査をしたが異常は見られなかった。そして次にツトム様が検査したところ、喉に異常が見られるとのことで念入りに検査をするためミナミ様がこちらに来るとディスプレイに表示された。


「え、ツトムさん何か心当たりありますか?」


「いや...強いて言うなら元々喘息気味で、そんで喉がイガイガするくらいだな。あとはしばらくずっと走ってたからな、汗かいて風邪でも引いたのか?」


アラタ様は少し怪しがっていたがツトム様を見る限りはそこまで大事には至っていないようだから本当に風邪でも引いたんだろうか。


「じゃ最後にホープも!」


「私は機械なので感染症や寄生虫などにはかからないですが」


「まぁいいから!ほら!」


カスミ様のゴリ押しにより検査をしたがやはり異常は特には見当たらなかった。とりあえずはツトム様以外は全員なんとか船内に戻れるようで一安心といったところか。私の検査結果が出されたのと同時に奥の通路からミナミ様が早歩きでこちらに向かってきた。


「ちょっとツトム!またあなたなの!?」


「またってなんだよ!今回はほんとに風邪気味なんだって!ゲフッゲフッ!」


ツトム様は大声を出したことで少し負担をかけてしまったからむせている。それを背中をさすっているミナミ様、お二人は一緒にいることも多いため仲はいいのだなと考えた。


「ていうかカスミさん、その子は一体?」


「この子はレナちゃん、今回捜索して発見したただ1人の生き残りよ。」


見慣れない子供の姿を見たミナミ様に紹介をしている。


「そうだったのね...そしたらこの子はそしたら誰かと相部屋にさせるしかないわね。その方がこの子の気持ちも少しは落ち着くと思うから。」


「わかったわ。レナちゃんそしたらしばらくの間は私が一緒にいるね、どうかな?」


「うん、わかった...」


レナ様は静かな声で答えていった。しばらくの間は元気を出してもらうためになにか喜ぶようなことを考えてみることにしようと私は考えた。


「もう大丈夫だろう?なら私は戻るぞ。」


マコト様はそう言って先にエアロックに宇宙服をしまいに戻って行った。続いてレナ様とカスミ様は先に自分の部屋を案内するとエレベーターに向かった。ミナミ様とツトム様は念の為に医務室へと向かい残ったのは私とアラタ様の2人になった。


「ホープ、そしたら僕たちも宇宙服をしまいに行こうか。」


「わかりました。」


そうして2人でエアロックに向かうことにした。





     ーーーーーー


「ホープ、僕はやっぱりビビりなのかな?」


「いきなりどうされましたか?」


「いや、1人で情報収集してくれてたとき僕はみんなにバッシングされてたんだ。いくら機械だからといって子供1人にそんな危険させるなって。それにあれについてもみんなに問い詰められてね、ホープに失望されてないかなって。」


「私は何も...」


なぜだか私は黙ってしまった。伝える言葉は決めていたはずだったのに、カスミ様に助けられた時と同じ感覚に陥る。命令通りにこなしたのだからそれでいいはずなんだが何かが喉をつっかかえている。


すると前からはミスズ様が歩いてきた。


「あ、アラタさんにホープくん!お疲れ様!」


「ミスズさん、お疲れ...様です。」


笑顔で私たちを出迎えてきてくれたミスズ様に気まずい返事をしたアラタ様。それもそのはず、私たちは建物でミスズ様のお父様にお会いしたのだから。


私はポケットから渡されていたお守りと現場に落ちていたネームプレートを渡すことにした。


「ミスズ様、これを。」


ミスズ様は驚いた顔を一瞬したのちすぐに笑顔に切り替えて


「ありがとホープくん!そっか...やっぱりお父さんはもう...」


「ミスズさん、すみません。もう少し早ければ助けられたかもしれなかったのですが...」


今にも泣き出しそうなミスズ様に寄り添い静かに手を握った。そして私なりに励ましをしようと考えた言葉を伝えていく。


「ミスズ様、私は機械なので泣くことはできません。ですが私も、ミスズ様のお父様が亡くなりとても悲しいです。ある本に、女の涙をしっかりと受け止めるのが男としての礼儀と書いてありました。


泣き終わるまで私たちはここにいます。笑えるようなお話をたくさんします。優しく抱きしめていきます。なので...どうか泣いてください。泣きたい時に泣けなくなってしまうのは、悲しすぎます。」


「お父..さん...お父さん!!

うわぁぁぁーん!!!」


ついにミスズ様の並々溜まっていた心のコップが溢れ出してしまった瞬間だった。私たちは静かにミスズ様が泣き終わるまでそばにいることしかできなかった。

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