chapter2:Encount

「ここだよホープ。みんなここで普段は会議までゆっくりと過ごす居住区のような空間になっているんだ。」



 そう言われついてきた先に見えたのは何やら広場のような場所だった。歩くだけでもそれなりに広いスペースだ。この船にこのような場所があるとは思わなかったが。私はアラタ様に初めて話しかける。



「アラタ様、みなさまはどちらにいらっしゃいますか?」



「お、やっと話してくれたね!今みんなはそれぞれの場所で自由時間を過ごしているからこれから会いにいこう!そうだ!せっかくなら最初にホープが声をかけに行って来なよ!僕もあとから説明しにいくから!」



 なんだかとても不躾がましいことをされるもんだ。とりあえず目の前にいる2人に声をかけてみる。



「こんにちは。」



「うわ、なんだお前!」


「え、子供?」



 予測通り驚いている。いきなり話しかけたら誰でもそうなる。



「やあ2人とも!」


「なんだよ、アラタじゃないか。てかその子供は一体なんなんだ?」



「前にロボットを作ってるって言ってたじゃないですか?ついに完成したのでせっかくならサプライズもかねて驚かそうと!」


「人が悪りぃなお前は」


「そう言わないでよ、かわいいじゃん!」



「自己紹介が遅れたな、おれはツトムヒビノだ!」


「私はミナミシライ、よろしくね!」



 どうやら歓迎されたようだ。2人はパイロットと看護師のようだ。


 ツトムヒビノ様、この船のパイロットで普段はこの船の航路の確認などをしている。ちなみに隣にいるミナミ様と恋人関係になっている。少しお調子者だとか。



 ミナミシライ様、普段は医務室にいて具合が悪いクルーの面倒や未知のウイルスの感染を防ぐために健康状態を把握している。感情表現が多い方のようだ。2人に頭を撫でられたりジロジロと見ていると奥からさらに2人がやってくる。



「え、なんだそれ?ロボット?」


「不思議なものだね。」



「彼らはそれぞれケントクモヤとアスカタムラ。生物学の研究をしている博士と僕たちが雇われている会社『コマンドメント』の社員さんだよ。」



 ケントクモヤ様、データを調べると新種の生物を発見、研究をしさまざまな賞を受賞した経歴がある。今回は「マリス」に生物がいるかの調査の依頼で同行した。僕を見て驚いた顔をしている。



 アスカタムラ様、今回の開拓の旅のスポンサー『コマンドメント』の社員で随時任務の報告を行っている。また、『コマンドメント』の社長令嬢だとも聞いた。だからなのか、少し豪華な服装といった感じだ。



 それぞれにも挨拶をして驚きながらも私を歓迎してくれた2人に感謝をし、2人の元から離れた直後。向こうからまた声をかけてきた人がいる。顔や体に傷があり、いかにも怖い軍服の男だ。



「ふん、ロボットか。アラタくん、完成したようだな。」



「あ、ノムラさん。」



 マコトノムラ様、陸軍所属元第17機械兵器殲滅部隊所属だという。階級は少佐。いかにも歴戦を戦い抜いてきた男の風格をまとっている。だが私を見てアラタ様にこう言った。



「言っておくが忠告しておくぞ。ロボットに変な知識を入れない方がいい。しっぺ返しを喰らうのは私たちなのだから。」



「わかっています。監督責任は僕にありますので。」


「ならいい、私に近づけさせなければ何も言わない。」



 そう言い残して去っていった。どうやら私を嫌いなようだ。機械兵器を殲滅する部隊にいたのだから無理もない。



「なんなんだあいつ、前々から気に入らなかったんだよな。」


「ほんと、軍人だからって私たちに対してああいう態度はないわ」



 ツトム様とミナミ様が怒ったように言いながらこちらに来た。すかさずアラタ様が取り持った。



「まぁまぁ、彼は軍人ですしやはりなにか理由があってのことですよ。」



 何かしらの事情がある人間もこの船にはいるようだ。ツトム様の機嫌をアラタ様が直しているとまたさらに今度は言い争っている2人組が歩いてきた。



「へーこいつは高く売れそうなもんじゃないかw」


「おい、変なことをしてみろ。私の武器でお前の腕を切断するからな。」



「わかってるわうるさい女だな。」




1人は武器を手に歩き、もう1人は手錠をかけられて連行されている。私は2人を見ているとアラタ様がまた私に説明をしてきた。



「あの2人はジュンタケウチとカスミホドタさん。あの男の人には注意して、あの人はたくさんの犯罪を犯してきた人で、なんでこの船に乗せてもらったのかわからないから。もう1人は今回僕たちの旅の安全を守るために船長が雇った傭兵だよ。」



 ジュンタケウチ様、話を聞く限りたくさんの犯罪に手を染め人にたくさん迷惑をかけてきた悪人。水ぼらしい服を来てところどころ穴が空いているからお金がないのだと思う。



 カスミホドタ様、傭兵として今回船長様が雇った凄腕らしい。マコト様とはまた違った風格をまとっており、冷静な女性の印象がある。



 今日だけでもいろんな人間がこの船に乗ってきていることがわかった。これで全員か?そう思うと食べ物を食べながらこっちに向かってくる女性が。



「あれ、アラタさん、もしかしてこの子アラタさんの子供ですか!?」



「違いますよミスズさん、前にも話しましたがこの子は以前からこの船で作ってたロボットですよ!ホープ、この人はミスズアラヤさん。まだ学生の身でありながら今回この開拓についてきた人なんだ。」



「よろしくねホープくん!」



 軽く作り笑顔で対応する。初めて笑顔というものをしたからどう見えているかわからないが。



「さてとこれで全員紹介できたね。」


「ところでアラタくんはどうしてここにきたの?」


 ミナミ様はアラタ様に目的を聞いてきた。



「あ、そうだ!13時にリフレッシュルームに集まってくれと船長が言ってましたのでそれを伝えに。」



「肝心なとこいつも抜けてるよなアラタは。13時ね、わかった。みんなにはおれから伝えるよ。お前はまだホープに色々と見せにいくんだろ?」



「そうですね!時間まではいろいろとまずは船を案内していければと!」



「わかった、楽しんでこいよ!あと時間遅れんなよ遅刻魔笑」



「それは今ホープの前で言わないでくださいよ。じゃまた後で!」



 こうして2人と別れた。



「さてと、いろいろと時間までは一緒に船を見て回ろう!ついておいで!」



 そういうとまた勝手に手を引っ張られた。



      ーーーーーー


 時刻は12時過ぎになっていた。それまで私はアラタ様と共にいろいろと船内を見て回って教えてもらった。


 B2は主に資材置き場、B1は管制室や船のエンジンなどの機械室、2Fは医療室やそれぞれの部屋、リフレッシュルームもここにある。


 3Fはエアロック。主にここで宇宙服に着替え、出入りに感染対策の抗菌ガスを浴びてから目的地に向かうようになっている。


 4Fは娯楽施設の数々。基本的にはほぼ全ての娯楽が入っている。バーやカジノまで備えられている。



「さてと、これでひとまず全部かな!とりあえずキリがいいからリフレッシュルームに向かってみよう!」



 そう私に伝え、2人でリフレッシュルームへと向かっていく。






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