chapter3:communication
リフレッシュルームの中は意外と広い。中央にはみんなで会話をしたり集合して会議をするテーブルが置いてある。100インチを超えるディスプレイやさらに部屋の隅には何十年前かのレトロなアーケードゲームが置いてある。
「ここがリフレッシュルームだよホープ。みんな起床したらここに集まってこの開拓の旅について話し合ったり雑談したりして交流を深めていくんだ。」
アラタ様は私に丁寧に説明をした。周りを見渡すと、ふと気になるものがあった。ディスプレイの左側に何やらカップなどの容器が置いてある。
「アラタ様、あちらにあるのはなんでしょうか?」
「ああ、あれかい。あれはコーヒーオーダーメイドさ。僕が作ったんだけど、オーダーメイドってなってるのになかなか僕たちの好みを覚えてくれなくてね。やってみるかい?」
AI搭載型のコーヒーメーカーだ。使い方などを教えてもらい、操作することになった。
使い方は至ってシンプル。コーヒーカップを台に置き、誰が飲みたいかを選択、するとAIがその人のデータベースにアクセスして趣味趣向や好みを分析して味やコクなどを決めていく。
そうして味などを決めるとあとはカップに注がれるだけ。ミルクや砂糖などもそのときに差し出される。
さっそくアラタ様の情報で入力をすると30秒ほどで完成した。それをアラタ様に差し出す。
「どれどれ...。...やっぱり苦い...」
アラタ様はどうやら甘いコーヒーが好きなようだ。一口飲んだアラタ様は後味で舌を出しながら渋い顔をしていた。
そんなやり取りをしているとツトム様、ミナミ様が部屋に入ってきた。
「なんだ1番乗りだったか。てっきりまた遅刻すんのかと思ってたわw」
「ホープと船内を回るって言ったじゃないですか。それにいつも遅刻するのは発明に没頭しちゃってるからですし。」
「まぁまぁ2人とも、ホープ君にそんな見苦しいの見せちゃダメでしょ。ホープ君はこんなご主人様で大丈夫?w」
「ミナミさんまでやめてくださいよー」
私にはこのやりとりはよくわからないがミナミ様にしっかりと意見を述べた。
「はい、アラタ様は私にいろいろと教えていただきました。」
「ほら、ホープは優しくていい子なんだから!あんまりからかわないでくださいよ2人とも!」
アラタ様が恥ずかしがりながら2人に弁明した。すると部屋にさらに1人入ってきた。カスミ様だ。
「おや、まだみんな揃ってないのかアラタくん?」
「はい、まだ時間じゃないので。あ、そうだ!カスミさんにはまだ紹介してなかったですよね。この子はホープといいます!ホープ、挨拶しな。」
「初めましてカスミホドタ様。私はホープです。よろしくお願いします。」
「ああ、よろしく」
そう言いながらカスミ様は私に手を差し出してきた。何をしているんだろうか?
「おや、アラタくん。子供を自慢したいからってしつけがなってないんじゃないのか?一体誰との子供なんだ。」
少しニヤけながらカスミ様はアラタ様をからかう。
「え、カスミさん!?この子は僕の子供じゃ...」
「ふふ、冗談だよ。からかってみただけだ。
この子が例の制作していた子供型ロボットなんだろう?」
「はい!やっと完成しましたのでみんなに紹介していました」
「そうか...。いいかいホープ、これは握手って言うんだ。」
握手とは一体...。データベースを確認してみるがなぜ人は握手をするのだろうか。心がない私には理解ができない。
「カスミ様、握手とはなんでしょうか?」
そう聞くとカスミ様は私の手を握って。
「握手はこうやって、互いに戦う気はない。
仲良くしたいってわかりあうために行うんだ。」
カスミ様の手は暖かかった。そして肌触りがいい。私とは違い命というものが備わっているからなのか...。とても傭兵をしているような人の手じゃないほどに。
「カスミ様、貴重な情報ありがとうございます。人間のみなさまと仲良くするときには必ず使用します。」
「ああ、そうしてくれ。」
カスミ様は少し嬉しいのか顔を赤くしてそう言いカスミ様はツトム様、ミナミ様の元へと向かった。
「どうホープ、カスミさん優しい人でしょ?
あんな人が傭兵の仕事をしているのは意外だよね。」
「はい...私もそう考えます...」
人というのはギャップというもので成り立っているのかもしれない。
ーーーーーーー
それからさらに15分が経ち、今度はケント様、アスカ様、ミスズ様の3人が部屋に入ってきた。
「あれ、ホープくんもいますよ2人とも!」
「ほんとね、アラタくん会社にはホープ君のことは伝えてるの?」
「一応ホープについての資料などをアスカさんのディスプレイに送信しましたよ。そちらをそのまま会社に送ってもらえれば」
一応は会社の人間という立場上、アスカ様には敬語のアラタ様の構図。いや、基本はアラタ様は敬語で丁寧に皆さんに話している。
「それにしてもアラタ君は不思議なロボットを作るよね、子供型学習システムを搭載していくなんて。」
「ケントさんもやっぱり気になってますか?」
「そうだね、人間には遺伝子上で本能的に備わっている機能にはなるけど...。ロボットにそのようなシステムを導入する事例は聞いたことないからすごい興味があるよ!
ホープ君、よかったら僕の今持ってるこの本を読んでくれないかな?」
ケント様はまるで新種の生物をまた発見でもしたかのように目を輝かせて私に言った。
「わかりました。...ケント様、こちらはどのような内容の本なんですか?」
「ああ、ごめんね説明してなくて。これは1番最初に宇宙に開拓した人の自伝なんだ。宇宙航海の中で仲間と力を合わせて困難に立ち向かった事実とかが書いてあるんだ。」
開拓全史〜あの星は綺麗だった〜
データを確認すると、もう今から30年前に開拓の旅へ出かけた一行が様々な事件や出来事に巻き込まれながらも立ち向かい、そして開拓に成功して地球に帰還するまでのお話だ。
人間というのは「個」という存在ではちっぽけなものだが互いに団結し、「集」まった団体では最大限に発揮をしていく生物のようだ。
10分ほどで本を読み、ケント様にお返しをした。ケント様はもっと読んで欲しい本があると言い部屋を飛び出して行った。
「全くケントさんは相変わらずハマっちゃうと我を忘れちゃうよね♪」
ミスズ様は笑いながらそう言った。なぜ笑ってるのかはわからないけれど。そんなこと言っている途中にある人が入室してきた。マコト様だ。
彼が入ってきた瞬間に部屋の中が一瞬で静まりかえった。どうやらジュンタケウチという人と同じようにあまり歓迎されていない人なのだろう。程なくしてカスミ様がマコト様に声をかけていく。
「おやおや、軍のお偉いさんは社長出勤のようだね。」
「君のように暇な人間ではないのでね。軍に提出をするデータを作成していただけだ。」
「ほうそうかい。それにしても随分と人に大しての接し方がひどいね。よほど他人と話してきてもらってない感じ。」
「あいにく、君のように戦闘中で野蛮な行動を起こすような人間ではないのでね。君こそ、よく乗員のやつらと仲良さげに話してるそうじゃないか?」
仲裁にアラタ様が入っていく。
「やめてください2人とも、ホープにそんなところ見せないでくださいよ。」
「アラタ君、さっきも話したけど君の隣にいるそのガラクタにあまり変なことを吹き込まない方がいい。いや、もうすでに他の乗員に吹き込まれているか。」
「おい、いいかげんにしろよジジイ。私は別に構わないがホープにガラクタって言ったことは気にくわねぇ。銃を抜け、私と決着をつけろ!」
「ふん、この時代遅れの剣士もどきが。そろそろ死ななきゃわからないようだな。」
お互いが自身の武器を相手に向けて牽制をする。私は2人を落ち着かせるためにアラタ様と止めていく。
「カスミ様、おやめください。私はまだ生まれたばかりなのであの方にガラクタ呼びをされても致し方ないことです。」
「だけどいいのかいホープ、あんな風に言われて傷つかないのかい?」
カスミ様は私に対しては優しい口調でお話をする。
「マコト様とどのような因縁があるのかは私はわかりませんがどうか私に免じて今は耐えてください。お願いします。」
データにアクセスをして人間のケンカの仲裁についての知識を入れておいたため、さっそくその実践に入ったのが今の現状だ。
「わかったよホープ。変なところを見せてごめんね。あいつに何かされたらすぐに私に言いな。」
「ありがとうございます。」
私はカスミ様に感謝をして次にマコト様の元へ行く。
「マコト様、私に対してどのようにお考えなのかは定かではありませんがあまり人が集まっているこの場でトラブルを引き起こされても困ります。どうか今一度その銃を下げてください。」
「ふん。」
そう鼻息を立てマコト様は静かに少し遠くの席へ座った。それを見ていたみなさまが私に対して賞賛の声をあげる。
「すっげぇなホープ!お前やればできるやつだったんだな!見ててスッキリしたぜ!」
「ほんといい子だねホープ君!」
「ケンカ仲裁するロボット、ますます興味持っちゃったよ!」
「会社にもこんな子がいたらみんな喜ぶわ!ぜひ帰ったらうちに来てホープ君!」
「ホープくんすごーい!」
みなさんが私を褒めている、ということは内容から理解をした。
ちなみにジュンタケウチはというと...。
「クソ、なんでおれは未だに牢屋生活なんだよ!早くおれを出せー!」
閑話休題
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