第35話 これは誰かのために
「前の家より良さそうだな」
一人自室で本を持ちはぁ。とため息をつきながら呟くログ。バタンと強めに本を閉じ、本棚に戻した。自室を出てすぐリビングの方からマオとフランの笑い声が聞こえてきた
「それでですね、ご主人様がですね……」
お菓子片手にマオに話をするフラン。マオも興味深げにうんうんと頷いて聞いていると、ガチャとリビングの扉が開く音が聞こえて、フランの話す声がピタリと止まった
「ご主人様、魔術の調子はどうですか?」
フランがエヘヘと苦笑いでログに話しかけるが、特に返事をすることなく、窓際にある椅子に向かいながらちらりと一瞬ソファーに座る二人を見た
「僕の分のお茶も頼む」
「はい。すぐに淹れますね」
急いでキッチンの方へと向かうフラン。その後をテーブルに置いていたティーポットも追いかけるように浮かんで向かっていく。キッチンからガチャガチャと聞こえはじめると、マオが窓際で座るログの方に目線を向けると、置きっぱなしにしていた本を読んでいた
「フラン、魔力の様子はどうだ?」
「特に変わりありません。ご主人様は?」
「僕は調子が良さそうだ」
「それは良かったです」
紅茶を入れたティーポットと一緒にキッチンから戻ってきたフランがログに紅茶が入ったティーカップを差し出す。受け取ったログが、ふぅ。と息を吹き紅茶を冷ましながら一口飲むと、マオの前にあるテーブルの上に一冊の本が現れた
「その本に書かれた魔術、フランと一緒に取得しておくように」
ログがそう言うと、マオが不思議そうに首をかしげながら、テーブルの上にある本を取りページをパラパラとめくる。本を開いてすぐ険しい表情になり、フランが心配そうに近づいた
「その魔術が使えないようなら、学園のランクを上げるなんて言えないな」
「いや、使う前に読めない……」
「これは確かに難しいかもしれませんね」
本を読むフランと、書かれた魔術を見ないように少し顔を背けるマオ。二人で色々と本を指差しつつ話しながら一通り読んだ後、マオがふぅ。と深呼吸をした
「でもこれはミオが不得意な魔術だし、頑張ってみるよ」
「頑張ってください。私も精一杯応援します!」
「フラン、ありがとう」
見つめあい微笑む二人。そんな二人をログが紅茶を飲みながら見ていると、リビングにある時計から時間を知らせる音が鳴り響いた
「もう夕御飯の時間ですね。せっかくマオさんも来ましたし、一緒に食べましょう」
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