第32話 ヒラヒラと舞う羽根

「やっと帰ってきた気がする……」

 フランに途中まで送ってもらったマオ。家の前に立ち、白い鳥をぎゅっと抱き締め、はぁ。と一つため息をつく。ゆっくりと玄関の扉を開けると、夕食の匂いがした

「あら、お帰り。いつからいたの?」

 キッチンに行くと、ご飯の盛り付けをしていたカナリヤかマオと目が合い少し驚いた顔で話しかけた

「今、帰ってきた。ミオはいる?」

「今お風呂に入っているはず。マオも後から入りなさいね」

「……うん」

 白い鳥を背中に隠しながら、階段を登る。そーっとミオと共有している部屋の扉を開けると、そーっと部屋の中に入り、そーっと白い鳥をベッドに置いた

「ミオが戻るまで、ここで休んでてね」

 白い鳥の頭を撫でながらそう言うと、答えるように翼をバサッと大きく広げた。白い羽根がマオの周りにヒラヒラと舞う。その時、ガチャと部屋の扉が開いて、タオルで濡れた髪を拭くミオが部屋に入ってきた

「あれマオ。帰ってたの?」

「帰ってたのじゃないよ、早くこの子の傷を治してあげて」

 マオがベッドを指差しながら言葉強めにミオに言うと、ベッドを見たミオが不思議そうに首をかしげた

「この子の傷ってなに?」

 ミオがそう言うと、マオも指差したベッドを見る。さっき連れてきたはずの白い鳥が居らず、ベッドや床に散らばっていたはずの白い羽根も無くなっていた

「あれ、ちゃんと連れてきたはずなのに……」

「強い魔力の側に居すぎて幻でも見たの?」

「いや、そんなはずは……」

 部屋の中を見渡し、窓を開け家の外も見渡すマオ。ミオは、その様子を横目で見つつ、まだタオルで髪を拭きながらマオのベッドに座った

「それかグレニア学園にいすぎて魔力も鈍ってきたんじゃないの?」

 クスクスと笑って言うミオにマオは返事をしないまままだ部屋の中を見渡し、部屋の扉を開け廊下も見渡し白い鳥を探す

「ねぇ、それよりさぁ」

「……なに?」

 ミオに返事をしながら扉を閉める。振り向くとマオが連れてきた白い鳥よりも少し明るい色の白い鳥が一羽ベッドに座るミオの側で休んでいた

「今度の大会って出るんだよね」

「一応出れるから出れたら良いとは思っているけれどね。でも、出れてもすぐに負けちゃうかも」

「そ、つまんないの」

 肩に乗った白い鳥を見つめながらミオが呟く。そっと白い鳥の頭を撫でると、バサッと大きく翼を広げ姿を消した。数枚の羽根がマオとミオの間にヒラヒラと舞い落ちていく中、ベッドに座っていたミオが、うーんと背伸びをしながら立ち上がった

「今度の大会、このまま私が優勝したらつまんないから、あの人と一緒に倒しに来てよ。頑張ってきてね」

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