第31話 気持ちが戸惑いつつも
マオとの会話の後、フランがリビングから見えるキッチンでカチャカチャと食器やコップを用意する音がマオがいるリビングまで聞こえてくる
「フラン、僕の分の紅茶も頼む」
と、静かなリビングに突然響いたログの声にマオが一瞬驚いて、少し離れた場所で椅子に座り本を読むログを見た。ログもマオの視線に気づいて目線を返した。それに気づいたマオがあたふたと狼狽えながら目線をそらした時、ふとリビングにある本棚に目線が向いて、ソファーから立ち上がりたくさんある本を見た。先ほどフランが片付けたばかりの本を手にとり読んで見たり、少し高いところにあった本を取り見てみると、マオの知らない文字で書かれた魔術書で、パラパラとページを流し見ながら首をかしげた
「なんだかこの本、難しいっていうか……」
本を適当にめくりながら呟いていると、読んでいた本が独りでにふわりと浮かんでマオの手から離れ、さっきまでいたソファーの隣にいたログの方へと飛んでいく
「ちょうど探していた本だ」
本を取りそう言うと、さっきまで座っていた椅子に座り直し本を読みはじめた
「マオさん、紅茶を頂きませんか?」
いつの間にかリビングに来ていたフランがテーブルにティーカップを置いた。ティーポットから注がれる紅茶を見ながらソファーに座り直すとフランがティーカップをマオの前に差し出した
「どうぞ。お口にあうと良いですが……」
ニコリと微笑むフランの声を聞きながら暖かい紅茶が入ったティーカップを手に取り、ふぅ。と一息をつきながら一口飲んだ
「ちょっとほろ苦くて美味しいね」
「これご主人様の好きな紅茶で、マオさんが買ったクッキーに合うと思いまして。お口に合ってよかったです」
ログのコップに紅茶を注ぎながらフランがそう言うと、マオも紅茶をゆっくり飲みながらログとフランの様子を見る
「ご主人様、食べず嫌いをせずにどうぞ」
クッキーをのせたお皿とコップを差し出す。ちらりとクッキーを見て、はぁ。とため息をつきながらクッキーを一口食べた。それを見てマオも用意されたクッキーを食べた。フランもマオの隣に座り、クッキーを一つ取った
「ねぇ、この家にはフランとログ以外も住んでいるの?」
「そうですよ。ですが、私は魔力の回復のため、ここにいる時は、ほとんど姿を消して休んでいます」
マオがフランのティーカップに注ぎながら聞くと、フランが口一杯にクッキーを頬張りながら答えた
「じゃあ、ログは一人?寂しくないの?」
「騒がしいよりかはいい」
ログがマオの質問に小声で答えると、側にある窓に目線を向けた。同時にフランもリビングにある窓を見る。マオもつられて窓を見ると、いつの間にか暗くなっていた空に驚きつつも、特に変わらなさそうな空の様子に、まだ窓を見るフランに恐る恐る声をかけた
「ねぇ、どうしたの?なにが……」
マオがそう言った時、ログが持っていた本をパタンと閉じた
「怪我をしたかもしれない。早く連れて帰った方がいい」
「怪我?だれが?」
ログの言葉にマオが首をかしげ聞き返すと、フランが玄関の扉を開けマオを呼んだ
「怪我をした方は門の外に居るはずです。急いだ方が良いです」
フランに言われて急いで家を出た。残ったフラン玄関の扉を開けたままは椅子に座り紅茶を飲むログを見た
「ご主人様、マオさんを途中までお送りしますね」
門の外から聞こえてくる騒がしくマオの声を聞きながらフランが玄関の扉を閉めようとした時、ログが居る方からカタンと物音が聞こえた
「フラン」
名前を呼ばれて振り返ると、二階へ向かう階段の側に立つログと、本棚にあったはずの本がフワフワと浮かんでいた。それを見たフランが困ったように笑うと、それを見たログもフフッと笑った
「約束をしてすぐだか、この家を引っ越すことになった。帰ってきたら片付けをよろしくな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます