第26話 寄り道ついでに

「ちょっと食べ過ぎたかなー、お腹が重いや」

 ログとご飯を食べた帰り道、うーんと背伸びをしながら歩くマオ。ふぅ。と一つ深呼吸をしてふと辺りを見てみると、すぐ近くにある公園の少し開けた場所に、見覚えのある魔方陣と魔力を感じ、その場所へ歩いていくと、ミオが開いて手に持っていた本をバンッと勢いよく閉じた

「ミオ。何してるの?」

 マオがミオの背後から声をかける。声がした方にミオが少し振り向き、マオの姿を見るとふぅ。と一つため息をついて、持っていた本をパラパラとページをめくりはじめた

「なにって、練習してるの」

 マオに素っ気なく返事をすると、ミオの足元にある丸い魔方陣が消え、本を読みブツブツと一人言を言いはじめた。すると、またミオの足元にさっきとは違う文字と模様が書かれた丸い魔方陣が再び現れ、マオが慌ててミオから距離を取った。それをちらりと横目で確認したミオが、手に持っていた本をまたバタンと閉じた。ミオの足元にある魔方陣から、ふわりと風が吹き、側に落ちていた枯れ葉がヒラヒラと舞い、マオの側に落ちた。その枯れ葉に目線を向けていると、ミオの周りを囲むように水が溢れていた

「水が……」

 マオがポツリと呟いた時、ミオの周りにあった水が、空へと浮かび上がりマオとミオの目線が上に向いた



「相変わらず魔力も魔術も凄いね」

「ちゃんと練習しているからね。あの学園にいるのも大変なんだよ」

「……そうなんだ」

「お姉ちゃんも、久しぶりに私と練習する?」

「ううん、見ておくよ」

「そ、つまんないの」

 ミオが不満そうに返事をすると、空まで浮かんでいた水が雨のようにパラパラと落ちはじめマオの服が濡れた

「今はこの魔術を練習してるの?」

「そう、今はね」

「あまり周りに迷惑かけちゃダメだよ」

「わかってるよ」

 クスクスと笑うミオが右手に持つ本がふわりと浮かんで、ミオの頭の少し上に止まると、バラバラとページがめくる音が聞こえると、まだ雨のように降っていたミオの水の魔術が止み、ミオの足元にあつた魔方陣も消えた


「さてと、私そろそろ帰るけど、お姉ちゃんは?」

「私は歩いて帰るよ。ちょっと遅くなるって伝えてて」

「仕方ないなぁ。伝える代わりにおやつもらっておくね」

 フフッと笑いながらミオがそう言うと、左足で地面を軽く蹴った。ガシッと地面を蹴った音と共にミオの姿も消えて、マオがふぅ。と一つため息をついて、帰ろうと来た方に振り向くと、ログが一人歩いているのが見えて、急いで追いかけた


「ログ、なんでここに?」

 歩いているログの後ろから声をかける。ちょっと振り向いたログが、面倒そうにはぁ。とため息をついた

「家に帰る前に散歩代わりの寄り道」

「そっか。ログもお腹いっぱいだもんね。ちょっと運動ついでにいいかもね」

 ログの返事を聞いてマオがフフッと笑う。ログかまた歩きだし、慌ててまた追いかける

「そうだ。この広場は魔術練習しても大丈夫だから、運動ついでに私の魔術の練習相手になってくれない?」

「フランも寝ているし、今は魔術を使いたくない」

「じゃあ、魔術から逃げてよ。それならいい?」

「……まあ、それならいい」

 ログの返事を聞いてミオがいた広場へ走って戻り、後をついてきたログの方にくるりと振り向いたその右手には、マオが魔術に使う為の杖を持っていた

「本気出すからね。頑張ってログも本気で逃げてよ」

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