第3話 誰にも気づかれないように
ログとフランと別れた後、寄り道をすることなく真っ直ぐ家に帰ったマオ。家の前に着くとふぅ。と一つ深呼吸をして、玄関の扉を開けるとすぐ美味しそうな匂いが漂ってきた
「あらマオ、お帰り。学園はどうだった?」
リビングに行くと、キッチンでマオの母親が夕御飯の用意をしていた
「なかなか良い感じ。何名か友達も出来たよ」
「そう、それなら良かったわ」
手際よく夕御飯を作るマオの母親のカナリヤの後ろ姿を見ながら、テーブルに置かれていたお菓子を手に取り頬張ると、ふと家がいつもより静かな気がしてリビングを見渡した
「そういえばミオは?」
「まだ学園。授業で遅くなるってさっき連絡が来たよ」
「へー、登校初日から大変だね」
「そうね。マオもたくさん勉強をして転校出来るように頑張りなさい」
カナリヤの話を聞きながらお菓子を食べきったマオ。返事をすることなく、次のお菓子を取り一口食べるとキッチンから出て玄関の方へと歩き、扉を開けてキッチンに向かって大声を出した
「お母さん、ちょっと出掛けてくる」
「マオ、ちゃんと夕御飯までには帰ってくるのよ!」
そうカナリヤが叫んでもマオからの返事はなく、その代わりにバタンと玄関の扉が強く閉まる音がキッチンまで聞こえてきた
「ご主人様、今日は何を食べましょうか」
一方その頃、家に帰る前にグレニア学園の近くにある街をのんびり歩いていたログとフラン。マオに会ってからまだご機嫌なフランに対し、いつもより少し人が多い町並みにログがげんなりしながらフランに返事をした
「別に何でもいい」
「何でもはダメです。ちゃんと栄養を取って食べないと魔力にも魔術にも影響しますよ」
フランが肩に乗っていたのを頭の上に移動しながらちょっと怒った声でログに話していると、突然立ち止まり横を向いた
「どうしましたか?」
フランもログが見ている先を見る。二人の視線の先に大きな木々がたくさんある公園があった。ログがその公園に近づいてみると、公園内の広場でのんびりと過ごす人達とは離れた場所にある小さな広場でマオを見つけた
「マオさんですね。なにをしているのでしょうか」
「さあ」
二人が近くにあった木に隠れつつマオの様子を見る中、ふぅ。と深呼吸をしたマオの足元にある草花がユラユラと風に揺れ、マオがもう一度深呼吸をした
「なかなかの魔術ですね」
「ああ、今の学園じゃなくても大丈夫そうな魔術だな」
「そうですね。最下位の学園に来るとは思えません」
「まあ、飛行魔術はいまいちそうだったけど」
「それはご主人様が言っても大丈夫ですか?」
休む間もなく次々に魔術を唱えるマオを見ながら二人がヒソヒソと話をする。しばらくすると、マオの魔術に気づいた人達が立ち止まり、マオの魔術を見ている。数分程、休まず魔術を使ったマオは疲れた様子でふぅ。と深呼吸をすると、魔術を見ていた人達もいつの間にか帰って、いつもの広場に戻っていた。
「……よし」
深呼吸を終えたマオがトンっと軽く地面を蹴るとふわりと空を飛びあっという間にログとフランがいる木よりも高く飛び、公園を後にした
「マオさん、帰るんですかね?」
「もう遅いからな。ボクたちもそろそろ帰ろう」
「はい。もう帰りましょう」
マオが帰っていた方角とは反対の道を歩きだしたログ。フランがログの肩に乗り、少し振り向いてマオの姿が見えないかと空を見上げた
「私、ミオよりは魔力も魔術もあるつもりだけどな……」
その頃、家に帰るため空を飛ぶミオは、広場で練習をしていた光景を思いだしていた。少し疲れたのか時折ため息をつきながら、目を閉じ魔術の確認をすると、グレニア学園がある方角を向いて、グッと一つ息をのんだ
「大丈夫、ミオには負けない。魔術ランク最下位の学園にいる私が負けるもんか」
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