第4話 言い訳の代わりに
翌日の朝、ガヤガヤと騒がしい校舎の中をマオがご機嫌で歩く。まだ見慣れない教室を見たりしていると、クラスの前をちょっと通りすぎている事に気づいて慌てて少し戻り、扉が空いていた教室の中には入った
「おはよう!」
マオがざわつきに負けないほどの声で挨拶をすると、声に気づいたクラスメイトの数名がヒラヒラと手を振り返事をする。マオも手を振り返しながら席に着くと、隣の席になったはずのログの姿がなく、教室の中を見渡してみる
「あれ、まだ来てないんだ」
うーんと背伸びをしながら呟いていると、騒がしかった教室が急に静かになり、担任が教室に入ってきた
「みなさん、おはようございます」
ログやマオのクラスの担任のレイカが少し緊張気味にペコリと頭を下げ挨拶をするとクルンと内巻きの茶色の髪が口元でゆらりと揺れた。緊張したまま、あれこれと話をするレイカを無視してミオがログの席を見たまま、呆れたようにため息をついた
「遅刻か……。ということはフランも来ないんだ」
そうミオが呟いた時にはレイカの話は終わり、ぎこちない足取りで教室を出ようとしていた
「フラン、どうだ?」
マオが学園に着く少し前、ログとフランは前日にマオが魔術を練習していた公園の広場にいた。フランが、ぎゅっと強く目を閉じてログの周りをグルグルと動き回っている
「いまいちです。私だけ朝ごはんを食べなかったからでしょうか」
「フランが食べれなかったのは寝坊したからな」
「そ、それは……」
ログの言葉に返事が出来ず言葉に詰まったフラン。ログの右肩に乗りしょんぼりとしていると、ログが広場から出るため歩き出した
「そろそろ行くか」
「もうですか?まだもう少し……」
「初日から遅刻だからな」
「そうでした。学園に通うんですよね」
ログの言葉にフランが納得したように返事をすると、ログがグレニア学園の方に歩いていく。人々の騒がしさが減り、のんびりとした時間が流れる街並みをちょっと歩く速度を遅くして歩く
「マオさんも来てますかね」
「ボクたちじゃないから遅刻はしないだろう」
時々、会話をしながら歩きグレニア学園が見えてきた頃、チャイムと生徒達の声が聞こえてきた
「たぶん授業開始に間に合いませんでしたね」
フランが一人呟くように言うと、ログは頷きもせず学園の門の方へと歩いていく
「あれ?あの人達は……」
校庭で魔道書と学園の教科書を持ち話し合うクラスメイトを見つけたフラン。ログも足を止め魔方陣を書いたり、術を唱えたりする生徒達の様子を見る
。何も起きず、首をかしげたり不満そうに魔道書や教科書を読むのを見て、ログがポツリと呟いた
「やっぱり魔術が使えないんだな」
「えっ、使えないのに、この学園にいるんですか?」
「この学園の魔術ランク最下位の原因の一つだな」
「そうですね……でも……」
二人が授業の様子に見入っていると、急に空に影が現れて、フランが見上げると怒った顔をしたマオが空から二人を見ていた
「マオさん!」
フランが大声で名前を呼ぶと、ログが顔を引きつらせた。マオが空から降りて二人の前に立ち、顔を合わせないようにしているログを睨んだ
「授業初日というのに、遅れて来たじゃないの」
「ああ、フランが寝坊したからな」
「うっ……。寝坊は事実ですが、言い訳に使わなくても……」
「フランは使い魔なんだから、フランが寝坊してもログには関係ないでしょ?」
「まあ多分……そうかもしれないが」
ログの返事にマオが少し首をかしげる。フランも何も言わずログの顔を伺っていると、校庭にいた生徒達がまた魔術の練習をはじめたのか、少し騒がしくなりはじめた
「この話の続きはまた後で聞くから、二人とも行くよ」
先に校舎の方へスタスタと歩き出したマオ。後を追いかけずその後ろ姿を見つめるログにフランがログの顔を覗いた
「フラン、今日はもう出てこなくてもいい」
呟くようにそう言うとマオの後を追うように歩き出したログ。その言葉にフランが少し驚きつつも、嬉しそうにログの前に出た
「了解しました。ご主人様、また明日です。おやすみなさい」
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