第2話
――― いやはや、これはまた
まるで我が子に愛情ぶつける若い親でもあるかのように。
――― さあさあ、こっちじゃ。この寝床でゆっくりと、お前の
ぐったりとした仔猫を首からひっつかみ、雑嚢からひきずり出した麻袋へと放りこむと。
いまだ産声ながれ出てくる地面の傷へ、また両腕を
つぎにひきずり出されたものは、これまたもがき泣きさけぶ茶虎の仔猫でありました。
――― おやおや、こいつも中々どうして。可愛らしいやつではないか。
――― ちぃと
小さな頭をぐりぐり撫でて、さらに泣き声あげさせると、満足したとでも言うように茶虎のからだをまた麻袋へ放りこんだ男爵は。
みたび地面に手を突きいれ、ずぶりとえぐり出しました。
土のなかからえぐり出されたは、ひときわ小さな、
――― いや。これはまたえらく
―――
ぐったりしおれた烏猫をも、また袋のなかへ突っこみ。
酔いしれたような手つきでもって、またまた地面に腕をしずめて。
ふと、上気したその顔を、けげんな様子で引きしめました。
すてた
五〇
てんでばららに向いたそれらの根元にあるものは、ずいぶん小さくあるものの、見たがえようなく、黒く、長い毛におおわれた、人の頭でありました。
――― なんとも、まあ。
――― ここへ来て、成りそこないが出るとはの。
“成りそこない”と吐き捨てられた、黒い頭のその異形は。
――― うぁぁ。うゎぁぁぁぁ。
と、気味のわるい、しかし、なんとも哀れな声をあげながら。
溺れた者が必死に水から顔をあらわそうとするように、土から
土の染みついたその面は、さらに異形でありました。
たしかに顔ではあるのですが、その造作がなんともいえず不自然で、人の顔をむりやり獣へくずしたような、獣の顔をつぶして人へと
人と獣の両方の顔をはんぱに
そのあちこちに、黒にくわえて白や茶色のいりまじった獣じみた毛の束をはやし散らした異形のそれは。
――― たっ、助けて。助けてよぅ。
と、思いのほかに
先ほどまでのふやけた笑みを跡形もなく消した男爵は、きたならしい糞でも視界にはいったような忌々しげな目で返しました。
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