第5話 ビル侵入

着いた場所は繁華街から離れた場所にポツンと立つビル。

配送用のトレーラーが多く停まっていることで配達関連の会社だと思われる。


 「ここでいいんだよね?」

 「はい、ここの積荷を仕分け、積み込み作業をしていました。」

 「積荷の内容は聞いていた?」

 「いえ、仕事の内容に積荷の中については詮索しないようにとの契約をしていましたし、

きっちりと包装されていたので中身が何かはわかりませんでした。」

 「でも、持った際に何が入っているか位はわかるんじゃないか?

重さ、感覚、音で予想できるものはあると思うんだが。」

 「重さは物によって違いますし、荷物に隙間がなくて想像することもできませんでした。」

 「情報は他にはなさそうだし、行ってみるしかないな。

とにかく、ワニ怪人君」

 「あ、和崎 郁人(わざき いくと)です。」

 「じゃあ、和崎君、君はここで待機だ。

その姿だと騒ぎになる。」

 「・・・そうですね、わかりました。」

 「じゃあ、行くぞ、赤井君。」

 「え?僕も行くんですか?」

 「ああ。」


漆原と赤井は車を降り、ビルへと歩きだす。

時間帯は平日の15時にもかかわらず、ビルからは作業する音が何も聞こえない中、2人は話しながら向かう。


 「君を連れ出した理由なんだが、和崎君の前で話せないことがあるからさ。」

 「和崎さんに何か?」

 「和崎君があの姿になってからかなり時間が経っていると思うが、彼が行方不明になっているという情報はないんだよ。」

 「え?流石に誰か気付きますよね。」

 「和崎君の住所を調べてもらったら、本人がいたそうだ。」

 「別人ということはないんですか?」

 「いや、簡単な受け答えと顔の確認で本人とされた。」

 「じゃあ、僕達が一緒にいるのは・・・。」

 「全くの別人という可能性がある。

ともかく、ビルにその手掛かりがあるはずだ。」


ビルの正面まで来るが音がしない。


 「誰もいないんですかね?」


漆原がドアに手をかけるとドアは開く。

施錠されていないのなら誰かいるはず。

廊下を進み、奥までいくと和崎君の言っていた荷らしきものが積まれた倉庫へとたどり着く。

薄暗い倉庫の中、ゴソゴソと音がしている。

 

 「誰かいるのか?」


漆原が制服に付けられているライトをつけながら、声をかけると荷の影から、作業服を着た男が現れる。

その男は具合が悪いようにフラフラとしながら、こちらへと歩いてくる。


 「だ、大丈夫ですか?」


赤井君が心配して声をかけつつ、近づいていくが、それを漆原が服の後ろ襟を掴んで引き戻す。

驚く赤井であったが、次の瞬間、自分の顔に当たる風と目の前で散るものを見て固まる。

目の前に散ったのは自分の髪、そして、その髪を切った思われるのは作業員の振るった腕。

その腕は人間の腕ではなく、爬虫類を思わせる鋭い爪と鱗がびっしりとついていた。

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