第13話 続 遠い国の返事 上 ありがとう!
お家に帰って宮子さんは手早くおにぎりを作ってくれました。ニャーモさんはそれをありがたく頂いたあと
「そろそろ出発の荷物をまとめます。」
と言って準備に取りかかりました。ずっと宮子さんのそばに居てあげたい。でもそれはできません。ニャーモさんにも生活があり、この旅が終わったら又頑張ってンケラドの仕事をしなくてはなりません。
「ニャーモさん、ちょと私を宮子さんに渡してください。」
手紙さんが言いました。ニャーモさんは手紙さんを宮子さんに渡しました。
「宮子さん、お願いがあります。宮子さんが私を書いてくれた処に私を置いてください。」 宮子さんはそっと手紙さんを胸にあてて、夫の書斎に入りました。夫がいつも使っていた机の上に手紙さんを置きました。
「ここであなたを書いたのですよ。このペンで・・・・もう7年も前になるのねえ・・こんな風にあなたと話せて、ニャーモさんとお友達になれて、会いにきてくれるなんて、あなたを書いた時には想像もしませんでしたよ。」
「私も宮子さんに会える日が来るとは思いませんでした。ニャーモさんはみんなの気持ちがすごく分かる人なのです。だから、私が宮子さんに一度でもいいから会いたいと思っていたこと叶えてくれました。キリエちゃんはサムハさんに会いたいの。だからこれからインドネシアに行くのです。」
「あなたは本当に良い人に拾ってもらえたわね。」
「宮子さん、ありがとう。私を書いてくれてありがとう。ボトルさんと海に流してくれてありがとう。」
手紙さんはずっと言いたかったお礼を言いました。
宮子さんはにっこりほほえんで
「私こそ、ありがとう。さあ、あなたも旅の準備をしなくちゃね。」
と言って手紙さんをキリエさんが待っているボトルさんの中に入れました。
時間です。橋本さんが車で迎えに来てくれました。
「宮子さん、楽しい時間をありがとうございました。お元気で。」
「こちらこそ、とっても楽しかったですよ。お手紙たくさん書きますね。最初は新しい住所から書きますね。メールボトル19さん、来てくれてありがとう。」
寂しい涙はありません。笑顔で手を振ってニャーモさんたちは出発しました。
徳島港に着いて橋本さんにも、素晴らしかったクルーズのお礼を言いました。その時突然メールボトル19が声を揃えて言いました。
「橋本おじちゃん、ありがとう!一番楽しかったです。私たちニャーモさんが作ったお話できるロボットです!びっくりした?」
橋本さんはめちゃくちゃ驚いて、目をまん丸にしてニャーモさんの顔を見ました。ニャーモさんは可笑しそうに笑ってうなずきました。
橋本さんとお別れして、高速艇に乗って関西国際空港に向かいました。
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後日宮子さんは新しい居場所にお引っ越ししました。橋本さん夫婦も手伝ってくれました。やっと一段落して、お洋服をかたづけようとクローゼットを開けると、綺麗な包み紙に赤いリボンがかかったプレゼントが置かれていました。その上に木でできたトントゥがちょこんと乗っていました。ニャーモさんが!と宮子さんは思いました。
宮子さんが包みを開けると、12ヶ月の誕生石の色の、石畳のような模様のロングジャケットが出てきました。羽織ってみるとぴったりです。お手紙がありました。
『お母さんのような宮子さんへ
私が作りました。宮子さんに着てもらいたくて。長いからパジャマの上に羽織ってお部屋から外にも出られますよ。少し寒いときに着てくださいね。
お手紙書きます。元気で居てください。また会いに来ます。
フィンランドの娘ニャーモ』 宮子さんはベランダに出ました。海を眺めながらつぶやきました。
「素敵なお友達、ね、この柵、高すぎますよね。私何があっても絶対飛び降りたりしないのに。この柵の高さだけが唯一の不満だわ。他には何の不満もない良い人生。」
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上 終わり
続 遠い国の返事(第三部、完結編) @Kyomini
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