第5話 続 遠い国の返事 上 宮子さんに会える

「とうとう日本に着いたわね。ずっと内緒にして驚かそうと思っていたけど・・・あなたたち分かっちゃったみたいね。」

ニャーモさんは悪戯そうな笑い顔で言いました。

「うん、KIX問題でなんとなく分かってしまったの。ねえ、この空港でまた私たち『ロボット』したほうがいい?」

「ううん、降りるときは簡単なの。だから何もしないでバッグの中で静かにしていてくれたらいいわ。」

ニャーモさんの言葉通り、入国検査を受けて、飛行機のおなかの中に預けて置いた大きなトランクを受け取ったらもう、外に出てかまわなかったのです。とても簡単でした。


「やっと日本の土を踏んだわ。これから高速艇に乗って徳島に向かうのよ。」

「・・・徳島・・・宮子さんの処へ行くのね。私すごく嬉しい。だって私は宮子さんのことほとんど知らないのだもの・・・・宮子さんが私を書いてすぐボトルさんに入れて、浜辺へ行って流したの・・一回ボトルさんがぐるっと回ってくれたとき遠くに宮子さんの姿があったわ。でももうとても小さくなっていて顔もはっきり分からなかった・・・

 一度も宮子さんとお話したこともなかった。今日、会えるのね。お話できるのね。聞きたいことや言いたいことがいっぱいあるの。」

 手紙さんはしみじみ言いました。キリエさんは

『手紙ねえちゃん、ちょっとかわいそうだな。私はスラバヤではサムハさんと毎日過ごしていっぱい楽しい思い出あるし・・・・・それに手紙ねえちゃんもいるし・・・うん、宮子さんにあって、そのままニャーモさんがフィンランドに帰るって言っても私我慢する。』

言葉にはしませんでしたが、キリエさんなりにいっぱい考えていました。


関西国際空港は海の上に作られた空港です。だから周りは全部海。すぐ高速艇の乗り場がありました。

「あ、小さいね、この船。ニャーモさんと乗ったフェリーみたいに大きくないんだね。」 「あれは車やモーターサイクルなんかも乗せるし、一晩泊まるから寝室もいっぱいあって大きいのよ。高速艇は自動車なんかは乗せないの。でもすごく速く進む船なのよ。」

ニャーモさんの言葉通り動き出した高速艇はすごいスピードで進んで行き、船の後ろには大きな波ができています。

メールボトル19は景色をしばらく眺めていましたが、飛行機の中で全然眠らなかったのでそのうちすやすやと寝てしまいました。


高速艇は徳島港に着きました。そこからバスに乗ります。ニャーモさんのバッグに入ったメールボトル19はまだぐっすり眠っています。ニャーモさんは起こさないでおこうと思いました。

 しばらくして目がさめたようでメールボトル19が話しかけてきました。

「高速艇で寝ちゃった。まだ高速艇かなって思ったけど揺れ方が波と違って目が覚めたの。これは何?たくさん人が乗っているね。大きな自動車。」

「フィンランドにもあるけど乗ったことなかったわね。いつもピレンだものね。これはバス。停留所と言うのがあって、自分が降りたい停留所のところでブザーを押すと、運転手さんが停めておろしてくれるのよ。」

「そうなのね。私たちはいつ降りるの?」

「あと二つ。そこで降りますよ。」


降りる停留所に着きました。バスから降りると海の匂いがしました。

 片側は海岸。反対側は少し登りの坂道になっっています。

「ええと・・・バス停を降りたところにある坂道を登って行って、一つ目の角を右に曲がったところに宮子さんのお家があるの。さあ、行きましょう。」

その時手紙さんが言いました。

「ニャーモさん、ちょっと待って。ここ・・・・・・・・私とボトルさんが流されたところ。向こうに山みたいに海に突き出しているところが見えるでしょ。あれ、見覚えがあるわ。流れて行ってあの山みたいな処の横を通って広い海に出て行ったの。」

ボトルさんが、何回も何回も傾きました。

「ボトルさん、そんなに傾いて、違うの?ノーなの?」

「そうじゃないわ、キリエちゃん、ボトルさんは何度も何度も『はい』を繰り返しているのよ。そうだよ、そうだよって言いたいのよ。」

ボトルさんは今度は一回だけ傾きました。「はい」です。

手紙さんとボトルさんはとても懐かしいのだろうなぁと、ニャーモさんもキリエさんも思いました。ここからすべての旅が始まったのですもの。

「さ、行きましょう。宮子さんが待っているわ。」

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