第3話 続 遠い国の返事 上 とんでもないこと!

翌日朝ごはんを食べ終わるとニャーモさんは電話をかけました。そしてライダースジャケットとパンツも着てブーツもはきました。自分が作った大きな手提げ袋にメールボトル19を入れました。

 しばらくするとドアの外でブッブーとクラクションが鳴りました。

「さあみんなで行きましょう。暖炉の火はちゃんと消えているし大丈夫よ。」

 そう言ってトランクを持ち手提げ袋も大事にもって、玄関から出るときちんと鍵をかけました。外はやっぱり寒かったけれどすぐに止まっている車に乗りました。

「じゃあ運転士さんお願いします。」

 メールボトル19はこれは何だろう?自動車だけど何だろう?と考えていました。手紙さんとキリエさんがブツブツと話し合っているのを聞いて、ニャーモさんは言いました。

「これはタクシーっていうの。お願いして行きたいところに連れて行ってくれるのよ。」

 タクシーはしばらく走っていました。さあ着きましたよとおろしてくれたところは大きな空港でした。ヘルシンキ空港です。

「あ、ここ覚えている。私とボトルさんがインドネシアから帰ってきたところ。」

「今日はここから飛行機に乗るのよ。今度はね、あなたち荷物置き場じゃないのよ。ちゃんと人が乗るところに乗るの。だから飛行機の中が全部見られるわよ。窓からは空の景色も見られると思うわ。」

 メールボトル19はものすごく喜びました。飛行機に乗れるなんて!それに荷物室じゃなくって人が居るところに乗れるなんて。こんなことがあるなんてとっても嬉しい。ニャーモさんにありがとうと言いました。


空港はとっても綺麗で広くていろいろなお店ありました。レストランもあってまるで街中のようでした。大勢の人たちが歩いています。以前ニャーモさんがヘルシンキのデパートに連れて行ってくれたことがあったけど、本当にまるでデパートみたい。お土産を買う人がたくさんいるのでしょう。ニャーモさんのお家にあるトントゥもいっぱい売られていました。それを買っていく人たちもたくさんいました。

 木でできた様々なものや、トナカイの角でできたアクセサリー。トナカイの毛皮の帽子や瓶詰めになったベリーなども売られていました。フィンランドやラップランドで取れるもの作られるものが、たくさん並んでいました。フィンランド名物の世界で一番まずい飴と言われている、サルミアッキもありました。いったいどんな味なのでしょうね。

 おっと!あのお店は!『ンケラド』と書いてあります。中に入るとずらりと布が並んでいました。もちろんニャーモさんがデザインした布もたくさんありました。それらを見て、綺麗だわ、北欧の雰囲気だわと買っていく人がたくさんいました。空港から飛行機に乗ってあちこちの国に行く人たちがお土産で買っていくのでしょう。

 メールボトル19はちょっと自慢したくなりました。その布はここにいる私たちのニャーモさんが描いたのよって。


ふらふら歩いていて、ニャーモさんは立ち止まりちょっと考えました。

『うん、やっぱりフィンランドしかないものも買っていこう。トントゥが可愛らしくていいわね。それから、トナカイの角を細工したペンダント・・・こんなものほかの国にはないものね。』

ニャーモさんはトントゥを二つ。そしてトナカイペンダントを一つ買いました。


さていよいよカウンターに行ってニャーモさんはチケットを受け取り、大きなトランクを預けました。そのあとは保安検査場を通るのです。

そこで大事件が起こりました。

「あ、ペットボトルは持ち込まないでください。ここに置いていってください。」

と、係の人にニャーモさんは止められました。ニャーモさんは真っ青になりました。

『私・・・・すっかり忘れていたわ。そうよ、ペットボトルは持ち込んじゃいけなのよ・・・・・・・だってだって、私はメールボトル19のことをペットボトルだなんてもうずっと思っていなかったのだもの・・・どうしよう・・・・・ここでボトルさんを置いていくなんてこと絶対にできない。ただ捨てられるだけだもの・・それにボトルさんが居なくなるなんて考えただけでも鳥肌が立つわ・・・どうしよう・・・・・本当にどうしよう・・・この旅取りやめにしようかしら・・・』


ニャーモさんがどうすることもできなくなって立ち尽くしているとき、思いがけないことが起こりました。手紙さんとキリエさんが大声で叫びだしたのです。フィンランド語、英語、交代に叫んでいるのです。

 「私たちはお話できるの。このボトルさんは私たちの一部なの。さあ、ボトルさん動いて見せてあげて。」

 その言葉に状況を察しているボトルさんはガタガタと動きました。係員達は目を丸くして驚いています。口をあんぐりと開け信じられないことだと、じっとメールボトル19を見ています。

「私たちはこのニャーモさんが生み出した『しゃべるロボット』なの。ボトルさんは揺れたり、ぴょんと飛び上がったりいろいろできるの。ニャーモさんは私たちを持ってお友達に見せに行くのよ。ここでボトルさんを置いて行ったら、『しゃべるロボット』壊れちゃうじゃない!通して!通して!通して!!」

メールボトル19は必死で叫んでいます。


係員がニャーモさんに聞きました。

「これはあなたが作ったロボットなのですね?」

「は、はい。だからおいて行くことはできないのです。この子たちは私の大切な家族なのです。家族を置いて行くことなどできません!通してくださいますか?」

 ニャーモさんは泣き声で言いました。

係員達は目と目、身振り手振りて、『早く通せ』と、言っています。

「わ、分かりました。持ったまま通っていいです。す、すごいものを作ったんですね・・・本当にびっくりしました。さあ、どうぞ通ってください。」

ニャーモさんはにっこり笑って、ありがとうと言い、ささっと検査場を通り抜け、そこから見えない処まで歩いたと思ったらへなへなと床に座り込んでしまいました。汗が噴き出しています。


「あなたたちって!すごいわ。もう私どうなることかと心臓どきどきして何も思いつかなかったのよ。ただただ困ったって。ロボットなんて、いつの間に覚えたの?ボトルさんはいつの間に動けるようになったの?」

「ロボットって・・・TVで見たの。ニャーモさんがTVをつけたままお昼寝しているとき、TVでいろんなロボットのことやってて、わーーロボットってお話したりお手伝いしたりいろんなことができるんだなぁって思ったの。それからね、ボトルさんも自分の思っていること少しでも伝えることができたらいいなぁって考えて、手紙ねえちゃんと一緒に、動き方教えて練習していたの。

 はい、なら一回ちょっと傾く。いいえなら二回傾くとか、嬉しかったら少し飛び跳ねるとか、ね。」

ボトルさんは一回ちょっと傾きました。『はい』です。

 「・・・・そうだったのね・・・あなたたち本当に賢いわね。いつのまにかどんどんいろいろなこと覚えて、考えて。ニャーモ負けちゃうわ。」

「でも、通れて良かったね。」

 メールボトル19は嬉しそうに笑いました。ニャーモさんも泣き笑いの顔を見せました。「ここから先はもう大丈夫。次は出国審査を通るけど、私がパスポート見せるだけだし、あなたたちはバッグの中で静かにしていてね。」

やっと立ち上がれるようになったニャーモさんに連れられて出国審査場を通りました。そこは本当に問題なく通ることができました。

「さあ、あとは私たちの乗る飛行機の出発するゲートに行って、アナウンスがあるまで待っているのよ。」

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