第7話 銀鬼
「ゴボァッ!!」
俺は今、水中にいた。
てっきり地面に叩きつけられると思ったが、運良く地底湖のような場所に落ちた。
それでも、ものすごい高所から落ちたので、地面のように固かったが。
これまでの修練のおかげで俺の肉体強度は鋼のように堅くなっていた。そのおかげで、なんとか生き延びることができた。
とりあえず、収納魔法が付与されたネックレスから替えの服を取り出し着替える。
そして、現状を把握しようと鳥瞰透視で軽くあたりを見渡したところ、何やら巨大な空間があったので、とりあえずそこに移動することにした。
そこは白いドーム状の空間だった。俺は服を乾かすために出そうとしたところで、急に声をかけられた。
「…?何故こんなところに人間がいる」
振り返ると、そこには美しい銀の鬼がいた。
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「…?何故こんなところに人間がいる」
そう言ったのは、銀髪の美少女だ。
しかし、その額からは2本の白く美しい角が生えている。魔人だ。
俺は瞬時にロンゴミアドを構え、臨戦体制に入った。
「…そうか、お前異界の者か。ん?ユニークスキルを持っていないのか…
…あぁ、そうだな、ちょうどいい。もうお前でいい。もう疲れた。」
そう言うと彼女は自分の胸に腕を突き刺し、そのまま心臓を抜き出した。
……は?
「動くな」
次の瞬間、彼女は俺の元まで移動し、俺の口に無理矢理心臓を押し込んでいた。
ゴクン
鉄の味が口いっぱいに広がる。
「オ、オエェェ…!!」
やばい、やばい奴だこいつ。自分の心臓他人に食わせるとか何考えてっ!?
ドクン
…
…
…痛い
痛い痛い痛い痛いいた、いた、い、痛い痛い痛いいたい!!い、たい!!!!!
心臓が焼けるように熱い!!
熱い!
体の内側から俺が燃えている!
細胞の一つ一つが破壊されている!!!
「あーあぁ、やっぱりこうなるか。まぁ、もう少しだけ実験してみるか」
銀髪の鬼が何かを言っている。けど何を言ってるか理解できない。
そのまま俺は意識を失った。
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目が覚めると、俺は血溜まりの中にいた。
「起きたか」
側には俺に自分の心臓を食わせた鬼がいた。
咄嗟に離れようとしたが、まだ体が思うように動かない。
「無理に動こうとしなくていい。黙って聞け。」
動きたくても動けない。
それに、この魔人は襲ってくる気配がない。いや、さっきのを攻撃と捉えれば別だが…
「自分のステータスを見てみろ」
言われた通りにしてみる。
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田中春樹
種族:半鬼人
レベル50
ユニークスキル:台無し
スキル:ナイフ術(中級)
体術(中級)
槍術(上級)
鳥瞰透視
持ち物:ロンゴミニアド
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「!!!」
「ユニークスキルが生えているだろう。さっき私の心臓を食べたからだ。」
「お前はなんで死んでないんだ?」
「私のユニークスキルは”停滞”だ。肉体の時を止めればこれくらい造作もない。そもそも、私はこの迷宮の中では死なない。そういう縛りだ。」
「半分くらいしか理解できなかった…」
「頭悪いなお前」
「エリスは飲み込み早いって言ってくれたのに…」
あぁ、エリスが恋しくなってきた
「こんな状況で女のことを考えているのか。お前相当キショいな。」
「心外すぎる」
急に謂れのない中傷を受けた。というか何でバレたし。
「というか種族が鬼になってるんだけど!俺、魔人になっちゃってるんですけど!!何してくれてんの!!」
「些細な問題だ、気にするな」
「全然些細じゃない…」
「額に触れてみろ」
あれっ
「角が無い?」
「お前が鬼になったのは半分だけだ。普段は人間と変わらない見た目だよ。興奮すると魔力の角が出てくるかもしれないがな。」
「レベルがめちゃくちゃ上がってるのはなんで?」
「それも副作用みたいなもんだ。お前の肉体は私の血肉と魂に耐えられず崩壊を始めたからな。エリクサーをかけ続けたらそうなった。まぁ超回復を繰り返したようなもんだ。」
「へぇ、ラッキー」
いや、でもめっちゃ苦しかったからそんなにラッキーでもないのかもしれん。
それにしても…
「お前は何だ?何のために俺にこんなことをした?」
俺の問いに、銀髪の少女は答えた。
「私はこの迷宮の主、スズネだ。お前にはこの怠惰の迷宮を攻略してもらう」
いや、意味わからんな。なんで迷宮主が自分のダンジョン攻略させようとすんねん。
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