第41話 スマホ遠隔操作の犯人
警察から説教をくらって、何故か富脇君と二人きりになってしまった。異常事態があっても、対応できる態勢になっているようだが、この部屋に警察官ひとりもいないという展開は誰だって読めない。
「何でだろうね」
「さあな」
富脇君も分かっていないようだ。
「まあこっちとしては助かるんだけどな。気になってたんだろ? スマホの遠隔操作」
私は思い出す。遠くにあるはずのスマホが勝手に動き出したことを。
「あれって誰がやってるわけ?」
「天霧」
頭を抱えたくなる。
「高校生が犯罪をやってどうすんの」
「だよなぁ。もっと最悪なのは若い説教役がいねえってことだ」
富脇君の発言に引っ掛かる。
「説教役がいないってどういうこと」
「説教をするのが加茂だけどな。彼奴、仕事で東京じゃなくて、京都にいるんだ」
加茂さんがよく事務所で天霧君に説教をしている光景をよく見かける。富脇君もどちらかというと、諭すようにやっている印象がある。しかしどちらもいないとなると、天霧君のストッパーはいるのだろうか。
「他にストッパーいたりする?」
富脇君は苦笑いをする。
「降矢さんぐらいだなぁ。前なら先輩がいたけど、絶賛長期休暇中だし」
降矢さんの胃が心配になってきた。
「まあそういうのはいつものことだから……いや前より悪化してるなぁ」
富脇君の気苦労が見える発言だ。天霧君のやらかしは警察介入に繋がってしまう面倒なものだ。そういうわけで、私はあることを提案する。
「とりあえず迷宮入りさせる?」
「そうしよう」
本当はよくない。私という被害者が気にしていないから、天霧君の遠隔操作を迷宮入りにするだけだ。どちらにせよ。二人の説教は確定である。そしてこれは終わらせる。
「さっき、京都って言ってたけどさ。委託業務の奴?」
「そうらしいぜ。細かくは知らねえけど」
「だよね」
異能絡みの事件の解決が多い。機密情報がたくさんあるため、実際に従業員として参加しない限り、知ることがない。漏れることを防ぐためなので、当然のことだ。これ以上話し続けることができないため、次の話題に変えていく。
「帰ってきたら、アメリカと京都のお土産でお菓子たくさんになるのかな」
「俺がいるから、割合としちゃあ、アメリカが勝っているな」
一人しか違わないとはいえ、アメリカの方が多い。持ち込む量にもよるが、アメリカの方が多くなってしまう。
「問題は被る可能性があるってことだよな」
「そうだった」
富脇君と私は同じカルフォルニア州にいる。被ってしまう可能性は十分にあり得る。まだバイト先の土産を買っていないことが不幸中の幸いなのかもしれない。
「まだ職場の土産を買ってるわけじゃないから、まだ調整は出来るよ!」
「もういっそのこと、一緒に買おうぜ」
「それもいいかも。富脇君?」
富脇君はスマホを取った。何かを見ている。私を見て。スマホを見て。その繰り返しだ。覚悟を決めたように、ガチの顔になっている。何がどうしてそうなったのかは分からない。
「目を瞑ってくれ」
素直に目を瞑ったら、引っ張られて、唇が何かと触れた。
「よし。目を開けていいぞ」
そう言われたから、そっと開ける。富脇君は何故か逸らしている。数秒後には部屋の片隅で縮こまっていた。揺さぶっても反応がない。何故だろう。何をした。質問を出しても、無反応だった。何故か警察官が笑っていた。中には温かい目で見つめている人もいた。意味が分からない。
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