第12話 ファミレスにて

 事情聴取が終わった頃には夕方になっていた。異能捜査班の警察官の長い説教から始まり、自分の動きと犯罪者たちの動きの質疑応答に移り、市民達の保護の感謝の言葉で終わった形だ。


「戦利品が無事で良かったぁ」


 落ち着いた時に思い出した。同人誌を入れた鞄を置きっぱなしにしていたが、果たして大丈夫なのだろうかと。警察官が渡してくれたため、無事であることが判明し、鞄ごと抱き着く。やや冷たい目がある。それは気にしない。持ち帰ることが出来る。それが最も有難いことなのだ。流石に人がいる中で読んだりはしないが。十八禁も混じっているので、家でゆっくりと楽しみたい。そもそも……戦闘して、警察署に行っていたので、お腹が空いている。


「いただきます!」


 というわけで、ファミレスで夕食をいただく。ハンバーグ。Sサイズのライス。シーザーサラダ。ミネストローネ。だいぶガッツリと食べる。痛い出費だが、帰ってから自炊は出来そうにないので、これが正しい選択である。


「お前……めっちゃ食うな」


 富脇君の顔が引きつっている。一方の加茂さんは……無関心のようだ。いつも通りということだろう。


「しょうがないでしょ。能力使ったし、身体だってそれなりに動いたわけだし」


 食べながら、疑問に思う。何故二人が同伴しているのだろう。


「てか。なんで加茂さんと一緒に、私とここにいるわけ」


 仕事が終わって、事務所に戻っているはずだ。どういう目的があるのだろうかと、二人の様子を見る。加茂さんと目が合った。


「取締役からの指示だ。最寄りまで送れと。異能を使い過ぎたことで、身体に悪影響を及ぼすかもと。そう言っていたからな」


 加茂さんは静かに言い切って、コーヒーを飲んだ。


「そこまでやらなくてもいいんですけどね」


 異能を使い過ぎたり、結界の防御数値より上回ったりした時、頭が痛くなる。しかしそれは一時的なものだ。既に治まっている。問題なく帰宅出来るのだ。富脇君は笑ってはいるが、心配そうに私を見ていた。


「誰だって心配になるもんだぜ。ああ。言っておくけど、送るどうこうの指示を受けたのは加茂だけだからな」


 どういうことだろう。私は素直に富脇君に聞く。


「どういうこと? 別目的があるってこと?」

「ああ。聞きたいことがあるから、付いてきただけ」


 ただの好奇心だった。警戒した私がアホだった。ため息を吐く。富脇君の答えから察するに、どうせ異能に関する質問だろう。


「はああ。で。結界の異能についてでしょ」


 めんどくさいという声を出してしまったが、今は許して欲しい。


「そうだな。しかし」


 何故加茂さんが反応している。


「出来る範囲で構わない。言いたくないこともあるだろう」


 加茂さんが気を遣ってくれた。世間的に異能のことを表で話そうとする人は芸能界の住人ぐらいだ。当然のことではある。ただし、私はそういうものは普通に話せる。恵まれているからだろう。どこかが変わっていたら、ウルフハントの大神彰のような選択をしていたのだ。そう思っているのだが、遠い親戚が強過ぎて、元のところに戻るというオチだろう。


「いや。平気です。話しますけど……グダグダになります。多分」

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