相馬②

 雲一つない快晴の、平日の真昼の時間帯に、男性は一人でパチンコを打っていた。

「チッ」

 舌打ちをし、浮かない顔で店を出ると、直後に横の方向から声がした。

「あれ? その様子だと負けちゃったんですか? 賭け事でも、さすがに何でもできるってわけじゃないんすかね?」

 男性が視線を注ぐと、昨日の夜に出会い、なぜか自分の名前を知っていた、あの男が立っていた。そう、昨晩は否定したけれども、彼は男が口にした通り、名を服部といった。

 服部は不機嫌な表情に戻ると、男を無視して離れていこうとした。

「ちょっと待ってくださいよ」

 男は、今日は逃すまいという感じで、彼の後をついてきた。

「しらばっくれても駄目ですよ。あなたが服部さんだってことはわかってるんだから」

「そう言うあんたは誰なんだ? 名前を名乗ったらどうだ?」

 服部はぶっきらぼうに言葉を発した。

「そうですね、すいませんでした。俺は相馬っていいます」

「俺に何か用か?」

「聞いてもらいたい話があるんですよ。こうして歩きながらもなんですから、どこか落ち着いてしゃべれる場所に行きませんか?」

「俺は話すことはない」

「ご迷惑かけてすいません。でも、こんな状態を続けるより、話を聞いちゃったほうが良くないですか? どういう用件かわからないで付きまとわれるのは気持ちが悪いでしょう?」

 相馬は服部の正面に回り込んだ。

「あそこ、カフェですよね? コーヒーくらいなら、俺おごりますから」

 服部はどうするか考える様子で少しの間沈黙した。

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