第14話 人型の魔物
僕は結界の内側まで転移された。外にはゴブリンの亜種みたいな魔物が所々に点在している。
「やっぱり奥にやばい奴がいる……」
目を凝らしてもあまり良くは見えなかったが人型(?)の邪悪なオーラを纏ったものが宙を浮いている。
ひとまず、城の方向を見てここがどの方角なのか確かめる。どうやら今いる位置は北側のようだ。
僕は唾を大きく飲み込み、気を引きしめる。それと同時に、ノーブル王国の結界の速度が加速し、完全に消滅した。
僕は左手から剣を取り出し、魔物を狩りに行く。周りには同じ魔剣士学校の生徒やOBらしき人、それに魔法学校の生徒も後ろから援護が来ていた。
襲って来る魔物を試しに剣で振り下ろすと、一撃で消滅した。思ったよりも脆いようだ。
ちょっとしか魔力を帯びていない剣でも一撃だった。ただ全くキリがない。何度倒しても魔物は無限に湧いてくる。
魔法を使ってもいいのだが、今は温存しておきたい。本当に危ない時に使うことにした。
こっち側は周りで上手く連携し、街に一匹たりとも魔物の侵入を許していない。
他のところは大丈夫なのだろうか。今はそんなこと考えてる余裕はない。がむしゃらに戦うのみだ。
「キサラ君、大丈夫ですか!?」
何やら右の方から声がした。声からしてレイサだ。
「ああ!こっちは全然大丈夫だ」
レイサとは今まで話したことすらなかった。新学期になってから自分を変えるために外向的になったのだろうか。
僕は弱い魔物を倒し、ちょくちょく、人型の魔物に目を向ける。だが位置は変わらず、ただただ王国を眺めているだけだった。
何もしてこないのだろうか……。
すると人型の魔物の前に何者かが転移してきた。青髪のおかげで瞬時に分かった。
色皇魔術師セライド・ラミューだ。
「あなた。何者なの」
ラミューがいつもより低い声で発する。
「モ゛ス゛ト゛ロ゛……モ゛ス゛ト゛ロ゛……」
気味の悪い声に気味の悪い見た目をした人型の魔物は声を発した。表情も何も変わっていない。
「モストロ……?まあいいや、何もしてこないなら、倒させてもらうよ。諸悪の根源さん」
ラミューは空間から杖を取り出し、前方に構えて
「
と詠唱した。杖から発出された青空のような美しい光は瞬時に魔物を包み込む。
そして花火のように爆散した。
その爆発の影響で涼しい風がラミューに当たり、髪とイヤリングがなびく。
「ヴォア゛ヴォア゛」
体調が悪い時に見る夢のような気持ち悪い声だ。
人型の魔物はラミューの魔術を食らっても無傷だった。
「魔力が減らされている……」
ラミューは違和感に気づいた。普段の力が出せないということに。
――東では
「何だこの気持ち悪い雰囲気は……それにこの魔力」
レクタルもラミューと同様の魔物と対峙していた。
「まあ、何もしてこないなら攻撃するまでだ。
○
名前の通り、自身の血を消費して炎に変える魔術。使いすぎると貧血になって倒れる。
両手から繰り出された魔術。血が炎に変換され、帯状になる。そして光の速さで魔物の方へ向かっていく。
しかし、攻撃はすり抜け、そのまま燃え尽きてしまった。人型の魔物は透明だったのだ。
「どういうことだ……」
レクタルは理解していなかった。たしかに実物は目の前にいる。なのに透明なのだ。
――同じようにアドリル・ラグナ厶、カーリン・ラルディも攻撃を試みる
「ふざけてんじゃねぇ、クソヤろう」
「そうですか……」
やはりダメージは通らない。攻撃は貫通している。
すると……。
「消えた……?」
「何だ……」
「消えやがった」
東、西、南の魔物が何の素振りを見せずに姿を消したのだ。
色皇魔術師3人が一斉に理解する。
「今のやつは残像ってことか……」
「ラミューのとこのやつは消えていないだと……」
「まさか……ラミューさんが危ない!」
3人は透明の分身体釣られたのだ。
――――――――――――――
「魔力を溜め始めた……」
一方、ラミューの目の前にいる人型の魔物は、ラミューではなくノーブル王国に体を向け標的を定める。
そして何やら力を溜め始める。淡い紫色の玉がすくすくと大きくなっていく。
「ヴ ァ゛ァ゛あ゛ァ゛ァ゛あ゛ァ゛!!!」
一度も二度も聞きたくないような声で叫ぶ。そして人型の魔物はノーブル王国に向けて玉を発射した。
まるでレーザービームだ。台風のような風を斬る音が空間を凌駕する。
すぐさま、ラミューは攻撃を防ぐために、レーザー攻撃の目の前まで転移する。
「
と杖を45°前に傾けて詠唱し、レーザーを受け止める。魔物の攻撃とラミューの魔術はぶつかり、嵐のような強風が周りを包む。
「ごめん……みんな……」
次第にラミューの魔術は押され始め、魔物のレーザーはラミューの体を貫通した。
口から吐血し、身体から血が溢れかえる。ラミューは後ろから真っ逆さまに落下する。
――すると
「
「
「
ラミューが倒れた瞬間に、3人の色皇魔術師はレーザー攻撃の目の前に転移し、同時に技を繰り出す。
魔物のレーザーと3色に輝く魔術は衝突し、風を斬る音が強くなる。
「グァッッッ!なんて力だ……!」
「絶対に防ぐぞ……!」
「分かってます!でもこのままじゃ!」
3人の色皇魔術師が力を合わせ、何とか受け止めるが、少しずつ後ろに押され始めていた。
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