第12話 新学期
あっという間に休暇が終わり、僕たち5期生は進級した。普段とやることは特に変わらないらしいし、クラスも1クラスしかないため、クラス替えもない。あまり実感が湧かなかった。強いて言えば校舎が変わったくらいだ。1年次とは若干配置が違う。
それより国王の体調が気になる。いつ国王が死んで結界が剥がれるか分からないからだ。もしそうなった時の動きは何も指示されていない。不安要素しかないのだ。
レビア扉を開け教室に入る。
「引き続きこのクラスを担当するレビアだ。ところで今日から1年と2年は統合された」
「今までなんで別だったんですか」
タツヤが手っ取り早く質問をする。
「特に理由は無いらしい」
「そうですか」
タツヤは素っ気ない応答をした。
「今日から剣技を教え……」
「なんで今まで教えてくれなかったんですか」
タツヤが迫真の演技で問う。
「特に理由は……ある」
(こんどはあるのか……)
『特に理由は』の時点で、無いのだと勝手に思っていたのだが、理由があるらしい。
「今までなんのために訓練を行っていたのか。魔力の制御、そして剣技を身につけるための序章だ。剣技というのは剣の扱いをしっかり身につけてからではないと難しいからな」
理にかなっている発言だ。
「実は今日から剣技を教える予定だった。だがお前らはもう剣技を身につけている。自己流の方が戦いやすいだろうし、それに俺は魔法系だからな。今まで通り訓練に謹むといい。剣技について学びたかったらセキハに聞いた方がよっぽどためになる」
タツヤが絶妙なところで介入してきたせいで、剣技を教えるとのことの話かと思ったら、教えるのを辞めたという話だった。
こんな茶番は置いておいて、レビアが剣技について、セキハを推奨したのには理由がある。
セキハは前世で剣道をやっていたのだ。それに県大会で優勝したこともあるらしい。最初の実力試験で、好記録をたたき出したのは、剣道の経験と、魔力制御の天才的な感性がその理由だったのだ。
「あの……今日は何をするんですか」
とタツヤの前に座っている少女が、か細い声量で発言する。名前は……『レイサ』……だったはずだ。普段はセキハとよく話しているのを見かけている。
寡黙で内向的な性格のため、薄らとしか声を聞いたことがなかった。たった今、初めてちゃんとした肉声を聞けたのである。何故このタイミングで発言をしたのかは不明だ。
「今までの訓練はこちら側で指定していたのだが、今回から自分たちで話し合ってカリキュラムを決めろ。紙とペンは教壇に置いてある。書き終わったあと私に見せにこい」
「先生の許可が降りないと、そのカリキュラムは受理されないという認識で大丈夫でしょうか」
「ああ、その通りだ。ではしっかり話し合うように」
そう言ってレビアは教室の扉を開け退出した。
それと同時にセキハは椅子から立ち上がり、教壇の前に行く。そして彼女はいつも以上に明るく声をかける。
「何か良い案があったら、挙手して教えてください。私はどんどん記入していくから」
クラスメイトが手を挙げ、案を出している中、僕は窓の外が気になっていた。『何か』を感じたのだ。
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