第9話 魔法のすゝめ

――次の日、寮を出て教室へと入ると


「昨日のキサラ君かっこ良かった!」


「昨日の魔法教えてくれよ!」


いつもセキハがクラスの中心となり僕とタツヤは意気揚々と生活していたわけだが、昨日の出来事により一気に注目を浴びることとなった。嬉しい半面、落ち着かない気持ちもある。とはいえ良い気持ちであることには変わりない。


「では約束通り魔法の座学を行う。席に座れ」


担任のレビアが指示を出す。


「まず魔法を使うためにはどうすれば良いか分かるか」


「やっぱり魔力ですか?」

1人の生徒が言った。


「それもあるが1番重要なことは魔力量だ」


「この国で生まれ育ったものは生まれた時から魔力に触れている。魔力に長期間触れることで蓄えられる魔力の上限が上がる。だから魔法を習得しやすい。だが転生者は違う。お前たちはたった半年程度しか魔力に触れていない。つまり魔法を使うためには魔力量の増加と魔力の質が重要だ」


「では何故キサラ君とカーラルさんは魔法を使えるのでしょうか。あと魔法と魔術の違いを教えてください」


転生質問botメガネの大暴れだ。


「いっぺんに言うな!順番に説明する。結論から言うと、カーラルとキサラが何故魔法を習得できたのかは不明だ」


「不明って……どういうこと……」


セキハが僕を一瞥し、小声で発した。


「魔法を転生者で初めて習得したのはカーラルだった。キサラはそれを真似し魔法を使うことが出来た。だが何故使えるのかは不明だ」


「じゃあ運が良かったってことですか」


「断定的ではあるがそうだな。だがさっき言った通り魔力量と魔力の質を上げればいつかは習得できるはずだ。ひとまず学校の方針としては全員に魔法を教えることになっている。カーラルやキサラが魔法を使えた以上続けるつもりだ」


レビアの座学により多種多様な魔法があることを知った。レビアの話によると魔法には『初級魔法』、『中級魔法』、『上級魔法』が存在する。僕やカーラルが使った魔法は初級だった。教えてもらった通り、校庭で中級魔法を試す機会があったが何も起こらなかった。正直浮かれていた。僕もまだまだというわけだ。そしてカーラルは中級魔法を網羅しているらしい。上級魔法はまだ使えないという話しだった。カーラルは手加減していたのだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

授業が終わったあと、僕は担任のレビアに呼び出され、レビアの後を金魚のフンのように着いていく。いつもの転移魔法を使えばいいじゃないかとは思ったがなにか理由があるのだろう。僕は会議室のような場所に連れていかれた。そして対面で向かい合い席に座る。


「お前は紛れもない転生者だ。だが何故魔法が使える」

座ると同時にレビアは僕に喋りかける。


「分かりません。カーラルに勝つには魔法を使うしか無かったので、試しにやってみたら出来てしまって……」


「カーラルは国王の娘だ。魔法なんぞ使えて当然。だがお前は転生者。前代未聞だ」


やはりレビアはカーラルが国王の娘であることを知っていた。恐らく国王が入学させたのだろう。


「は……はあ」


僕は思考が停止していた。そんなこと言われても、分からないものは分からない。逆に教えて欲しいくらいだ。


「転生者が魔法を使えないのには理由がある。転生者は魔力に触れている時間が短いからだ。ノーブル王国出身の人間は生まれた時から魔力に触れている。10年かけて魔力量を蓄積していき、魔力量が増加することで魔法を習得できる。本来君が持っている魔力量は10分の1程度だろう。それにも関わらずお前は魔法を使えている。理論上ありえないことだ」


真剣な面でレビアは長々と語った。


「僕や王女以外の人間はまだ魔法を使うことが出来ないということは理解していたはずです。何故魔法を教えたのですか」


「ノーブル王国には魔法学校がある。転生者以外が任意で入ることの出来る学校だ。元々そこに入る予定だった。だがカーラル王女は魔剣士の道を進むと言い、国王が無理やり入学させた。だが国王の後を次ぐには魔剣士の技能だけではダメだと悟り魔法を覚えさせることにした。彼女の年代からな」


「カーラル王女しか魔法が使えないなら1対1で教えればいいじゃないですか」


「無駄だ。王女はああ見えて全て言いふらす正確なんだ。だからクラス全体で教えている」


「最初にも言ったがお前は紛れも無い転生者だ。あの結界を抜けてスターターセットを受け取ったとかでは無い限りな。まあそんなことは起こりえない話なんだがな。次の休暇で国王と対面する機会を作る。お前のことを報告したところ国王直々の命令でこいということだ。カーラルがお前を連れていく」


「はい。分かりました」


「出て行っていいぞ」


僕はとぼとぼと教室へ戻った。


――今日のカリキュラムも終わりいつものように食堂へ来た。僕より先にセキハとタツヤが来ている。


「魔法楽しそうで良いな〜」


「俺らは魔剣士としての最高峰を目指そう。魔法は一旦諦めるべきだ」


「でも魔法使いたいじゃ〜ん」

相変わらずセキハは酔った口調で話す。

今日の夜ご飯はよく分からない肉をつかったハンバーグの定食だ。2人の会話を聞きながら肉を口へ運ぶ。うん。よく分からない肉は相変わらず美味しかった。


「しょうがないだろ。使えないもんは使えないんだから。な?キサラ」


「さっきレビア先生に呼ばれて話したんだ。ノーブル出身は幼少期から魔力を触れてるから10年前後で魔法が習得できるようになる。だけど転生者はそうはいかないから魔法が使えないらしい」


「じゃあなんでキサラが魔法を使えるのか、ますます意味不明じゃなーい?」


「そうだな。理論に乗っ取っていない」


「まあいいやー10年後使えるなら」

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