第10話 神様は金色(こんじき)

暫くして

「マイちゃん、チェンジね。」

と耳打ちされた。


「中島さん、ごめんなさい。

マイ、ヘルプに少しだけ行かなきゃ。

帰らないでね、マイの事を待ってて下さいね。」

そう言って、手を握りながら、上目使いで

ごろにゃん。


「そうか?

まあ、ママの命令には逆らえんわな。

いい、行ってこい。」


「やっぱり、中島さんって紳士だわ。

ありがとうございます。」


何だろ?あのママがご機嫌になるなんて。

とりあえず、お化粧直しをして、さあ、見てやろうじゃない!


「いらっしゃいませ。

マイと申します。」

10人のお客、ざっと見て観察しなきゃ会話も出来ないわね。


私、凍りついた、、。

チビ、なんで、ここにいるの?


「ささっ、マイさんはこちらに座らせていただいたら?」

ママに促されて、その中では明らかにマウントの上位のお客の横に座らされた。


飲み物を作る手が震えた。

まるで新人の頃みたい、、。

作り笑顔よ、何があってもね。

ここでの私はマイ。

自分に負けたらおしまい、おしまい。

おまじないを胸で唱えると、いつもの

マイに戻れた。


「ママ〜、こちらは?」


「あら、やだわ。私ったら、ご紹介させて頂かなかったなんてぇ。

テレビ局の方なのよ。

こちらは、プロデューサーさんなのよ。

それとね、今、ブレイクされてる漫才コンビ

のお二人もいらして下さったの。

今夜はゆっくりなさって下さいませ。」


やっぱりそうだわ。

チビだわ。

こんな形で会いたくなかった。

私はひしゃげた気持ちなのに、作り笑顔。

もう、これが私なのか?私じゃないのかも

わかんないのよ。

早く、中島さんの席に戻りたい。

そればかりで、空会話をしていたわ。


黒服が中島さんが帰るって知らせてくれた時

神様にどんだけ感謝したことか。


中島さんをお店の外までお見送りして

また、あの場所に戻るのかと思うと

ため息がでたの。


「あのう、、。」

その声に振り向いてしまったの。









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