第5話 桜色の貝殻
こんな日がくるなんて思ってなかったと言えば嘘になるかも知れない。
「お姉ちゃん、僕な、遠くに行くんやて。
そこに行った方が幸せなんやて。」
「遠く?どこやねん!
誰が言うたんや?」
「知らん人が来て、なんかわからへんけど。」
「いっつもそうや。大人は勝手に決めよる。
チビ、逃げよか?
うちとふたりで。そないしよ。」
「僕、、。もうしんどいねん。
ご飯たべれて、お布団で寝たいねん。」
「そうか、、。
そやな。うちもおんなじや。
チビがそう思てんなら、しゃーないな。
チビ、どこに行ってもな、オモロイ事考えや。泣きながら、うちとの漫才思い出し。
チビ、公園の中でいっちゃん好きなモン拾うてきて。うちも探すから。」
ふたりで夕方までさがしたなぁ。
「お姉ちゃん、これ。」
貝殻やった。
うちは、少し削れたB玉。
「交換しよな。
このB玉な、太陽にすかしてみー。
ほれ、虹が見えへんか?」
「ほんまやー。虹が見えるよー。」
「交換やで。これなうちらだけの宝物。
今度、会う時まで待っとくんや。」
あの交換した貝殻は今もここにあるのよ。
見るたびに君を思うよ。
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