第3話 おにぎりはインク色

「おーい!

待ったか??

今日はな、ええもんあんねんでー。」


丸い新聞をふたつ出したんや。


「あけてみーー!」


「うわー、おにぎりや、デンガイなぁ。」


「そや、海苔も巻いてきたんやで。

具はないけどな。」


「ありがとう、お姉ちゃん。」


「だからなー、ここは突っ込むとこやねん。

具ないのんかーい!おまけに新聞紙かーい!

海苔なんか新聞のインクなんかわからんやんかーい!」


「そーなん?

次からがんばるわ。」


「さっ、早よ食べよし。

うち、お腹すきすぎて虫が泣いとんがな。」


「お姉ちゃん、お腹に虫おるん?」


「あははは。チビはほんまにええ子なんやな。

さ、いただきまーす。」

大きな口開けて、ほっぺた膨らませて

うちら食べたんや。



あの日、本当はお菓子とかアンパン、クリームパン持って行きたかったのよ。

コッソリとおにぎりを作るのが精一杯だったの。

新聞紙になんか包んだおにぎりを嬉しそうに食べてくれたよね。

あの塩っぱいおにぎりが脳裏に焼きついてるのよ。


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