第13話 炭鉱生活終了

あれからなんの問題もなく2日が過ぎ今日で最終日となった。この2日間でわかったことは、この鉱山は盗掘であり王都の大商会の一つがどこかの貴族と協力して王家から隠して掘っていて、この前のトラブルで名前の出たトールデンさんとは商会の番頭の一人らしくこの鉱山のとりまとめらしい。


これだけの人が動いているのに話が漏れないのは最終日に契約魔法を使ってこの鉱山について一切漏らさないと誓うためらしい。それに加えて基本的に出戻りしかいないので漏らそうとするものがいないとのこと。


なぜこんなことを僕が知れたかというと、頑張りすぎて班長とすごく仲良くなったからである。


「おーいアル坊!そろそろ昼にするぞ!」


「はーい!キリが付いたら行きまーす。」


「あんま遅くなんなよ。」


あーもうお昼か。ここでの生活もそろそろ終了だな。そうそうさっきの話の続きだが鉱山というのは国や領主の大切な産業でありこんな風に盗掘しているのは大犯罪である。鉱山一つでその年の利益に大きな影響を与え、取れるものによっては国を上げての大産業になる。


つまり見つかったら関係者全員死刑ということだ。それでなくてもかなり重い刑になる。僕も何かの間違いとは言えここに入ってしまったので関係者の一人だ。それならやることは一つここのことを密告することである。ここでの生活や仕事は楽しかったしいろいろな人と仲良くなったがそれとこれは別なのである。自分のために心を鬼にして取り組まねばいけない。


さしあたってどうやって契約魔法を回避するかである。契約魔法なんて全く知らないしさすがに教えてもらえなかった。どうしたもんか、とりあえず飯を食べに行くか。


「あと半日か、さみしくなっちまうな。アル坊はまた来てくれるよな?お前みたいな働きものは久しぶりだからな。」


「うーんこの仕事は楽しいから用事がなければかな~。」


「そんなこと言うなよ。」


雑な勧誘を受けながらの昼食を終えたら持ち場に戻って一心不乱につるはしを振る。どうすれば契約魔法を回避すればいいだろうか。話すことはもちろん紙に書いて教えることはできないだろうし絵なんかで表現するのはどうだろうか。なぞなぞなんかにして直接教えないっていう手もあるが何がいいだろか。というよりどこまでが契約魔法の対象なのだろうか。


いろいろと考えながら掘っていると小さな石炭が目の前に転がってきた。その時僕は良いことをひらめいた。


____________________


「よーし!今日はここまでだ。お前ら上に戻るぞ。」


班長の指示に従い入口へと戻る。上に戻るとほかの班も集まっているようで一緒に固まるよう移動する。


「全員集まったな。お前ら一週間ご苦労だった今から銀貨を渡すから一人づつ来てくれ。その際に新規のやつは契約魔法を受けてもらう。ここのことは他言無用なんでな。」


一列になり一人ずつ銀貨を受け取りながら前に進みようやく自分の番が来た。


「ご苦労だった。それからお前は新規だったな。汝ここの秘密を洩らさないことを誓うか?」


「はい。」


「ここに契約はなった。」


返事をすると目の前に黒い光の球が現れ僕の中へと入ってきた。服をめくって体を見てみるがそこには何もなかった。


「契約魔法を受けるのは初めてか?今の光は体の中に入っていったんだ。もし秘密を洩らせば体の中から契約者を苦しめ死に至らす。だから死にたくなかったらちゃんと契約は守るようにしておけよ。」


「わかりました。」


男は用は済んだといわんばかりに馬車のほうへ手を払い次のものを呼ぶ。


行きと同じように馬車に乗り出発まで待機する。もちろん乗ったら最後外の景色は見せてもらえないのでここの場所がわかるように帰りはしっかりと起きていよう。


全員の用意が終わったのか馬車が動き始める。何時間経ったかわからないが何度か休憩をはさみつつ王都へと戻ってきた。


王都に着き馬車を降りるとすぐに解散となった。


解散してすぐに商業ギルドへと行きギルド長のいる部屋へと入る。


「お久しぶりでーす。」


「あん!いままでどこに行ってたのよ!何の連絡もなしにいなくなって変な組織に誘拐されたんじゃないかみんな心配だったのよ。」


「いやーすみません。ちょっと出稼ぎに行ってまして。ちょっとこの部屋は暑いな。」


わざとらしく顔のあたりをパタパタと仰ぎ服を脱ぎその辺に捨てる。


「ここで脱ぐのはいいけどちゃんと持ち帰りなさいよ。」


「はーい。それで出稼ぎも済んだので少し休んだら仕事は始めますからよろしくお願いしますね。それじゃあ。」


手を振ってすぐに部屋を出る。もちろん脱いだ服はそのままだ。


「もう!あの子ったら服をそのままにしてってあら?なにか入ってるわ。」


服を片付けようと持ち上げると布とは違う硬い感触が手に触れたため裏返して確認を行うとそこには石炭や鉄鉱石、などいろいろなものが縫い付けてありそれとは別に子供の落書きのような絵が書かれていた。


「これは・・・・。」


______________


あれでわかってくれるかな?体に問題ないからまだ理解できてないか契約魔法のスキをつけたかだとは思うんだけど、どうか問題がありませんように。


僕がとった方法は現物を用意することと絵を描くことだけ。ここで重要なのは絵には目印になるものを書かないことだ。王都はもちろん鉱山の場所も書かない。円と円を線でつなぐだけ。これなら何を表しているかわからない。そこで必要になってくるのは鉱山で採掘した現物ということだ。


普通の人ならわかってくれないと思うけどギルド長なら大丈夫だろう。というか理解してほしい。じゃないと犯罪者の一員で終わってしまうからな。ひとまず疲れたし宿でゆっくりしよう。


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