第14話 問題解決
あれから数日、世間は大騒ぎだった。例の鉱山のことが王様に報告され、すぐに騎士団が派遣されて関係者が一斉捕縛された。
今回の盗掘事件の全容はどこぞの子爵がハーバス商会という王都の大商会の会頭とともに王都近郊で安く鉱石を入手し利益を分割するというものだった。
掘り始めてまだ数年しかたっていなかったらしいが、今まで見つからなかったのは人払いの魔法がかけられており無意識に鉱山周りを避けて通っていたかららしい。
捕縛された関係者の中で子爵と会頭および役就きは全員死刑となりほかの者は犯罪奴隷として処理され出稼ぎ組は特定が難しいということで無罪となった。
「いや~よかったよかった。」
「何がよかったよ!アルファちゃん。私が気が付かなかったらどうするつもりだったのよ。」
ごたごたしていた数日、僕は今まで通り商売をして何食わぬ顔をして過ごしていたのだ。
「気が付いてくれたこともよかったけど、無罪になったのがうれしくて。犯罪者にならなかったのは本当に良かった。」
「はーーー。あなたお気楽ね。一歩間違えれば死んでたかもしれないのよもう少し慎重に動くようにしなさい。まあ私は今回のことでいろいろなところに顔が売れたからいいけどあまり面倒なことはもちこまないでね。」
「はい気を付けるようにします。それで隣の方は・・・。」
今日の商売はギルド長に迷惑をかけたこともあってなんちゃって居酒屋を開いている。もちろん貸し切りで。お客はギルド長と知らない男性が二人。最初に説明してもらえると思ったが今の今までほったらかしだったので気になってこちらから聞いてしまった。
「え、えーっと・・・。」
なぜ黙るのだオカマよ。そんなモジモジされても誰も反応できんぞ。
「いやーすまんな。ここの飯がうまくて黙り込んでたわ。わっはは!」
「そうですね。うちの料理長には申し訳ないけど、この子の作る料理のほうがおいしい。」
すみません。それ召喚した食べ物で僕作ってないです。今日は特別に有名な店の物を召喚したからうまくて当たり前です。勘違いさせてほんとすみません。
「それで俺のことだがレックスっていうんだ。こっちは息子のバリスな。」
「バリスです。よろしくね小さな店主さん。」
「今日ここに来たのはお前さんに手渡すものがあってな、誰もいないところで確認してくれ。」
えーまたなんか危ないものなんじゃないかな?
受け取るのをためらっていると
「この人たちのことは私が保証するわ。早くもらっちゃいなさい。」
「じゃあ後で確認させてもらいます。」
「それにしてもうまいな~。決めた!俺はもう隠居してここで働く!どうだ坊主、用心棒なんか欲しくないか!これでも元騎士なんだよ。その辺のやつよりは役に立つぜ。」
「ちょっと待ってくださいよ!いきなりそんなこと言って面倒ごとを押し付けないでください。まだ年齢的には全然現役でやっていけるんですから駄目です。」
「うるさい!俺は決めたんだ。何人にも俺は止められんぞ。」
「はーー。」
「あの、盛り上がってるとこ悪いんですけどまだ僕お店持ってないんで従業員とかいらないんですよね。それにギルドの庭を借りて商売をしてるんで安全面もばっちりなんでなおさらいらないですよ。」
僕の話を聞いてレックスさんは少し考えた後悪い顔をしてこちらを見つめてきた。
「ほーそれなら店さえあれば雇ってくれるんだな。」
「まあ店があれば・・・たぶん。」
「言ったな。言質は取ったぞ。後からやっぱり・・・とか言っても遅いからな。」
「は、はい。」
「今日は良い日だ!この日のために俺は毎日頑張ってきたんだろう。それじゃあ俺はいろいろと準備があるから今日は帰らせてもらうわ。じゃあな!」
「ちょ!ちょっと待ってください父さん。」
上機嫌に笑いながらレックス親子は帰っていった。
「なんか怖いこと言ってたけど大丈夫かな?」
「今回のことについて私から言えることは何もないわ。みんなも帰っちゃったし私も今日はもう仕事に戻ることにするわ、ありがとねごちそう様。」
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アルファの露店を後にしたギルド長は部屋に戻り先ほどの会話のことを考える。
「レックス様たぶんだけどアルファちゃんのお店のこと絶対に勘違いしてるわね。あの場では言えなかったけどあそこは食事処じゃないのよね~。バリス様も大変だわ。」
考えるのもほどほどにして仕事に手を付けようと机の上を見ると休憩前にはなかった書類が山のようになっていた。
「なんじゃこりゃ~!ちょっと~だれかいないのかしら。」
「はい。なんでしょうか。」
「なんでしょうかじゃないわよ。なんで私の机が書類の山になってるよ。」
ぷんぷんと怒っているとそれを凍えるような冷たい目で職員は見つめ一言。
「いいですねギルド長は、みんながバタバタ働いている中でゆっくりアルファ君のところで美味しいものを食べられて。それも見たことないものばかりで私たちにお土産もないとは・・・・ギルド長には裏切られました。それは本来ギルド長がやるはずだった仕事ですのでゆっくりした分働いてください!それから私たちは今日定時で帰りますからよろしくお願いしますね!」
バンと扉を閉め職員は立ち去っていった。
「何よそれ。もうすこしやさしくしてくれてもいいじゃない。」
目じりに涙をため黙々と書類の山を片付けるギルド長だったがその日は深夜まで帰ることができなかった。
次の日の朝、職員のみんなに謝り倒して許してもらったらしい。
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