第11話 趣味を探して
何気ない毎日を過ごしていたある日、僕はふと思った。怪我による休日以外まともに休んでいないと。
なので今日は休んでしまおうと思う。
前世の僕であればゲームやら漫画やら休日の暇な時間をつぶすのは簡単なことだったがこの世界にはそれがない。ボードゲームはあるが遊ぶ友人もいないしどうしたものか。
趣味があれば話が早いんだが何をしようか。食道楽?それなら自分で作ったほうがそこそこうまいし、釣りはやったことないしそもそも海も川も近くにない。
虫取り?この世界の虫は大きいんだよな~。だって魔物が大半だし芋虫だって手のひらぐらいの大きさが普通なんだよ。そんな虫捕まえてこれないだろ?
乗馬?子供が一人で馬なんかに乗ってたら盗賊に一瞬で絡まれてお終いだね。馬も身ぐるみも剥がされ最悪命もおさらばさ。
あ~どうしよう。とりあえず部屋にいても仕方がないので大通りに出てふらふら歩きながら考えてるけど一向に案が出ない。こう言う趣味って自分で見つけられるのが一番だけど多くの始まりって友人とか家族からの誘いな気がするんだよ。
町行く人を見ながらふと思う僕って七歳だよな。孤児院組は七歳で働くのが普通だけど一般の人や貴族なんかはまだまだ働くってよりはお手伝いって感じで遊ぶのが普通だ。なので子供たちを観察することにしよう。間違っても怪しいストーカーではないので勘違いしないでくれ。それに同年代だからOKだろ。
観察対象1
僕より少し年下の子供たちのグループだ。石で舗装されていないむき出しの地面にお絵描きをしたり木の棒で勇者ごっこなどを行っていた。
お絵描きは何を書いているのかわからなかったが勇者ごっこはわかりやすい。ただ精神年齢的に少しやりずらいので今回はパス。
観察対象2
こちらは野良猫を触って遊んでいるようだ。猫はいいよな、見ているだけで心が癒される。動物を飼うのもいいかもしれないな。でも家を買うのがまずは先かな?動物が一緒に泊まれない宿は多いし何かあったら弁償しないといけないしな。
観察対象3
今までと打って変わって裕福層の子供たちを見てみると騎士ごっこが流行っているようだ。勇者ごっことやることに違いはないが身近にいる分いろいろと話が盛りやがるのだろう。うんうんみんな笑顔でとても楽しそうだ。
結果どれも参考になりませんでした。
年齢相応の遊びを参考にしたが精神年齢的に全く楽しめそうにない。どうしたものか。あれ?なんだかみんなが集まっている。
大柄な男性に話しかけた後どんどんと馬車に乗っていくではないか。男女関係なく大人から子供までいろんな人がいる。近づいてみると皆同じように<楽しい趣味を探している>と言ってから乗り込んでいるようだ。
これはチャンスだな。みんなも僕と同じように趣味がなくて困っているんだな。そしてこれは無趣味の人を救う慈善団体かなにかだろう。この波に乗るしかないな。
「こんにちは!楽しい趣味を探しています。」
「見ねえ顔だな、新入りか。お前はあそこの馬車に乗り込め。」
指示された馬車へと乗ると御者に合図があるまで中でじっとしていろと指示をされたので隅に座って時間を待つ。
「時間だ!全員出発しろ!」
馬車はスラム街を通って王都から外へと出ていく。ただ待っているのも暇なので中にいる人たちと親睦でも深めよう。
「僕はアルファって言うんだけ「黙って待ってろ!!」ど・・・・。」
怒られちゃった。どうやら静かにしていないといけないようだ。仕方ないので寝て時間をつぶそう。
___________________
「・・・きろ。・・・ろ。起きろ!!!」
「は!はい!」
ぐっすりと寝ていたようでまた怒られてしまった。
「馬車を降りろ。ここが目的地だ。」
馬車から降りて前を見るとそこには山にぽっかりと開いた洞窟があった。
「ん~~~?」
「よし!お前たちこれから班に分かれて行動してもらう。ここのことは口外禁止そしてもし逃げ出したものがいれば連帯責任で罰を受けてもらう。期間は1週間死ぬ気で働くように!」
こ・れ・は・ま・ず・い。
完全にやばい仕事に紛れ込んでしまった。班に分かれた後つるはしを渡され奥へと連れていかれる。もう逃げることはできないだろう。終わった。
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