第10話 お試し2

えーただいま休憩室は大変混雑しております。それもそのはずすべての職員が普段外で食べているのにあまり大きくないこの部屋に食事を求めて集まっているからである。


当初の予定では余るであろう量を作ったつもりだがご飯とみそ汁が底をつきそうである。


「えーっと。まだ食べる人はいますか?」


「「「「「はい!!」」」」」


男女関係なく多くの職員が手をあげてこちらを見つめる。


「今から大至急作るんで今ある分が無くなったら少し待っててくださいね。」


ご飯は混ぜるだけなので簡単なのだがみそ汁が大変だ。面倒くさいので包丁は使わないものだけで作ってしまおう。


水にだしとわかめを入れ豆腐を握りつぶして入れていく。後はなめこを召喚して瓶を開けすべてを流し入れて完成。トロトロみそ汁だ!


「お待たせしました。ご飯とみそ汁の追加でーす。」


「「「「「待ってました!!!」」」」」


「おっ!さっきと少し汁が違うぞ。」


「ほんとだ、なんだかトロってしてる。」


「なになに新しい料理?」


先ほどとは違うみそ汁の具に、食べ終えてゆっくりしていた人たちが息を吹き返しおかわりをし始めた。その勢いに負け補充した分はすぐになくなってしまった。


「あーおいしかった。満足満足。」


「ねー。これから毎日おいしい昼食が取れると思うと仕事頑張れるわー。」


「あのー。この昼食は不定期なんで毎日は無理ですよ。」



「「「「「!!!!!」」」」」



「何でよ!毎日じゃないの!」


「俺はアルファ君がギルドで働くことになったって聞いたからてっきり・・・。」


「僕は一応商人ですから自分の仕事もしなくちゃいけないし休日は欲しいですからね。一応開催する日は掲示板に張り出しますんで確認お願いしますね。」



「嫌だ嫌だ!俺は毎日ここで食事をとるんだ!」


「そういわれても僕は好きに生きたいんですみません。はーい休憩時間はもうすぐ終わりですから仕事の準備始めてくださいね。」


並んでいる鍋など洗いみんなを休憩室から送り出す。それで昼から何をやるか特に決めていなかったのでたまには変わったことをやろうと思う。


地球で生きていたころに動画でみた石売りをやろうと思うんだ。


普通のどこにでも転がっている石と鉱石や宝石が含まれた石を用意して布でくるみ見えないようにして縛りぐちゃっぐちゃに混ぜる。いわゆる運試しもしくはクジみたいなもんだな。


おひとつ銀貨1枚で売り出しみんなの幸運に期待しよう。今回用意したのは石が40に銅が10・銀が3・金が1・ルビーが3・サファイヤが3の合計60個。銅以外が出れば購入者としては元が取れるので内容的にはかなり良心的だろう。


それじゃあ始めていきますか。

_________________


「今日は何の店をやってるんだ?」


早速の客だな。ギルドに顔を出す人はもう僕のことを覚えてくれているようで店を出せばすぐに近寄ってきてくれる。


「運試しですよ。一個銀貨一枚でこの中には石から鉱石・宝石が混ざってるんで好きなものを選んでとってください。ちなみに中に入っている物はこれになります。」


紙に内容物を書きあたりが出ればみんながわかるようにバツ印を書いていくつもりで用意したものを見せる。


「そりゃあ面白そうだな。ほら銀貨一枚だ。どれでもいいんだよな。」


「はい。どれでもいいですよ。」


真ん中か隅のほうか、それとも箱の底か迷いに迷った挙句一番手前の物をつかみ布を開ける。


「何が出たんだ!」


ヤジも集まってきたようで布を開ける男性の手元に視線が集まる。


「銀鉱石だ!この量なら売れば銀貨枚は行くだろ!今日の俺はついてるぜー。」


カランカラン


「中当たり~。」


当たりが出たのでハンドベルを鳴らす。くじ引きと言ったらこれだ。この音が鳴ると祝福されてる感がでていいよね


「俺も一個買わせてくれ。」


「はいどーぞお好きなところを。」


「これだ!」


次の人はすぐに角にあったものをとり布を開ける。


「ただの石じゃねーか!」


「ははは。運がない奴はどいてくれるか。次は俺だ。」


箱の底に手を入れごそごそと動かした後これだっと言って持ち上げる。布を開けてみるとそこにはつるつるの石が入っていた。


「わっはは!お前もおんなじ石じゃねかよ。」


「お前と一緒にするんじゃねえよ。俺の石はつるつるしてておまえのガタガタの石よりは価値がある。」


「なんも変わらねーよ!ただの石ころだろ。」


「いーや違うね。」


石同士で話も盛り上がる人たちは置いておいてどんどんと売れる石たちあたりも続々と出て残りは石と金鉱石になってしまった。


次に購入する女性はこの二択を当てることができるのだろうか。


「片方が石でもう片方が金なのよね。手汗が半端ないわ。」


「一つはただの石、方やもう一つは本日の大当たりさあ今日のあなたの運勢はどう出ますかね。」


「こっちに・・・。いややっぱりこっちにするわ。お願い当たって!」


選び取った石を握り当たるように祈りをした後ゆっくりと布を取る。少しずつ見えていく石に自身はもちろん周りも息をのみながら見つめる。


布が完全に外されそこにあったのは石であった。


「あーーーー!!!。外れた!!!」


肩を落とし店を後にする女性。


「それじゃあ次に並んでた俺が金鉱石か!」


慌てて次に並んでいた男性が石を取り布を外してみると石が出てきた。


その状況に皆が首をかしげる。もしや金鉱石など入っていなかったのではと考えるものが出てきたその時。


「わーーーー!!!私当たってた!!」


先ほどの女性が全速力で店へと戻ってきたのだ。金鉱石を手にもって。


「はずれだと思ったけど裏返したら金鉱石だったの!」


「「「「「おおお!!!」」」」」


今日一番大きな音でハンドベルを鳴らし大当たりと声をあげる。


みんながあたりを祝福する中最後の一つを引いた男性は地面に崩れ落ちていた。自分の石で購入した石が外れたとはいえ最後の誤解がなければ払う必要のなかった銀貨一枚。同情する気持ちが大きいので内緒で飴玉を手渡す。


「おじさん、なんかごめんね。これお菓子なんだけどもって帰ってよ。」


「悪いな坊主。こんな俺を慰めてくれてありがとよ。」


______________


少し手違いがあったが今回の運試しは大成功となった。今日はもう帰ろうと思ったが食堂のことを思い出しギルドの掲示板へと向かう。


始まった次の日から休みになるのはなんだかかわいそうだからと思ったからだ。最初ぐらいは何日か連続で続けたほうがいいだろうと思ったからだ。


逆の立場だったら初日から日にちが開いたら嫌だもんな。


掲示板に○○日開店と書かれた紙を貼り付けギルドを出ていったあとアルファが張り付けた紙を確認しにきた職員が受付のほう振り返り頭の上で手を組んで大きな丸を作るとギルドの職員たちはいっせいにガッツポーズを行い今日の仕事に精を出した。



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