第6話 いい匂いは化け物を釣る

貴族に襲われてから5日たった。痣もだいぶ収まり痛みもなくなった。


その間宿から出ることはなく完全に引きこもり生活をしていたので久しぶりの外になる。今から向かう場所はもちろん商業ギルドだ。


前に話した敷地内での販売を行うために向かう。


______________



「こんにちは!お姉さん。」


「こんにちは。久しぶりね。もう怪我はいいのかしら?」


「少しあとが残ってるけどもう大丈夫です。前に話した件どうなりました?」


「もうばっちりよ!今日から使ってもらって構わないわ。」


さすが仕事が早いな。それなら早速使わせてもらうことにするか。


「じゃあ今か使わせてもらいます。」


「はいこれ。許可証だから持ち歩くようにしてね。ちなみに何を売るつもりかしら?」


「焼きトウモロコシを売ろうと思います。」


「焼きトウモロコシ?あまり聞かない名前だけどあなたが売るってことはおいしいのよね。」


「もちろんです。お礼もかねてこれから僕がここで売るものはギルドの職員さんには少し安く売りますからぜひ寄ってくださいね。」


「ぜひ行かせてもらうわ。」


お姉さんに別れを告げ、庭へと移動し販売の準備を行う。


まず初めにU字溝の大きいタイプを2つ呼び出し中に石と網を引いて底上げをしたら炭を入れ火をつける。


火が付いたら上に網を引いてトウモロコシを並べていく。網の上に小さな鍋を置き中にタレ用の醤油とバターを入れ温めておく。


トウモロコシに焼き目が全体的についたら刷毛を使って全体にタレを塗って再度焼いていく。するとここを中心に爆発的ないい匂いが膨らむ。


「ああ~いい匂いだ。よだれが出てくるな。」


タレが少し焦げ始めたらかん「こんな場所でいい匂いさせてるのはどこのどいつだ!おかげで仕事に集中できねえだろうがぁ!」


ギルドの二階の窓から怒声とともに坊主頭にイヤリングを付け口紅を塗った女服の大きな男が身を乗り出した。


何を言っているのか俺もわからないが、恐ろしい男女がこちらをにらみつけているのだ。


「あの~よかったら一緒に食べます?」


「ったりめぇだ。クソガキ。今すぐ行くから待ってろよ!」


その言葉どおり窓から飛び出し俺の前に着地する。


「おう、おめえがリンフィアの言ってたガキだな。面倒ごとに絡まれたって聞いたけどこんなうまそうなもんいろいろ売ってたら目付けられに決まってんだろ。」


この人がギルド長か。


「あははぁ・・・。」


「笑ってんじゃねえ!まあ、ここで商売するからには安全は保障してやるから安心しな。それでこれはなんだ?」


「焼きトウモロコシです。はいどうぞ。」


「おうありがとよ。」


手に取りいろいな角度から見た後匂いを嗅いで一口。


「うめ~。野菜の甘みにタレのしょっぱさ。それにこれはバターのコクか?それが合わさってめちゃめちゃうまくなってる。」


「口あったようでよかったです。今日はこれを販売するんでよろしくお願いします。」


「こんなのが続くなら大歓迎だ。それにギルドの職員には安くしてくれるらしいじゃねえかあんがとよ。それじゃあ俺は仕事に戻るからよ頑張って稼ぐんだな。」


見た目は恐ろしいけどいい人だな。あっ!ルッツさんがこっちに歩いてきた。


「あらルッツちゃんも焼きトウモロコシ買いに来たの?おいしかったわよ。」


は!?口調が変わってるんだが!


「みんなが気になってるみたいなんで代表で買いに来たんですよ。」


「もう!みんな仕事に集中してほしいわ。ま、私もこの匂いに誘われた口だけどねぇ。今日は私がおごってあげるから後でいくらかおしえてね。」


「ごちそうさまです。」


「それじゃあ。」


人を殺せそうなほどの強烈なウィンクを残し去っていった。


「やあアルファ君久しぶりだね。いい匂いがするから買いに来たよ。」


「お久しぶりです。飴の件では迷惑をかけたみたいですみません。これはトウモロコシと言って中央の芯についている黄色い粒が可食部で歯に挟まりやすいんで食べた後は注意してくださいね。」


「あ~を残し去っていった。


「やあアルファ君久しぶりだね。いい匂いがするから買いに来たよ。」


「お久しぶりです。飴の件では迷惑をかけたみたいですみません。これはトウモロコシと言って中央の芯についている黄色い粒が可食部で歯に挟まりやすいんで食べた後は注意してくださいね。」


「ああ~さっきギルド長と話してた時にちらっと挟まってるのが見えたからね。人前では少し恥ずかしいよね。みんなにも伝えておくよ。」


ぷっ!あの人挟まったまんま仕事に戻ったのかよ人にあったら笑われるぞ~あの人。


「ふふ。それで金額は1本銅貨5枚なんだけど3枚でいいですよ。」


「それじゃあ16本お願いできるかな。」


「今から焼くんでちょっと待ってってくださいね。」


____________


いや~売れた売れた。やっぱ飲食の商売をするときは圧倒的ないい匂いが正義だよね。匂いの範囲内に入ったら密に集まる虫のように寄ってくるんだから次から次に売れていく。場所が場所だけに絡まれることもないしいい売り場をもらえてよかった。


今日の利益はギルドの職員が16本で銅貨48枚に一般販売が87本で銅貨435枚で計銀貨4枚に銅貨が83枚。単価が低いから売り上げとしては少ないが十分な収益だ。この調子で頑張ろう。


~~~~~~~~~~~~~~~


「ギルド長今日の面会はこれで終了になります。」


「ありがと。それにしても大切な商談とはいえ疲れちゃうわね。」


「そうですね。毎日それなりのにぷぷぷっはははは!!!」


「ちょっと!急にどうしたのよ!」


「だって!だって!歯にトウモロコシが引っかかっははは!!」


「ん?どういうことよ!」


口の中に指を突っ込むと歯の隙間にトウモロコシが詰まっているではないか!今日一日これで過ごしてったってことはみんなに見られ・・・・。


「わはははは!!もーダメ、ギルド長少し席を外します。」


笑い声が廊下に響く中一日中醜態をさらしていたギルド長は恥ずかしさのあまり帰るまでは口を気にして隠すようにして過ごしたらしいとかなんとか。


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